【舞台「千と千尋の神隠し」】ハクを熱演中! 増子敦貴が語るトリプルキャストだからこその魅力
執筆者: ライター・エディター/佐藤玲美
宮﨑駿の不朽の名作の舞台『千と千尋の神隠し』。2024年3月の帝国劇場公演を皮切りに日本全国ツアーを開催中で、2024年4月よりロンドン・ウェストエンドで初の海外公演も決定している。この舞台の登場人物「ハク」を演じているキャストの一人として注目を集めているのが増子敦貴(GENIC)。ジブリ作品における好きなキャラクターとして常に上位をキープする人物・ハクとどのように向き合い、演技に昇華させているのか。舞台に出演中の彼に話を聞いた。
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初めてのジブリ作品で大人気キャラのハクを熱演
――『千と千尋の神隠し』の舞台でハクの役が決まったときはどんな気持ちでしたか?
増子敦貴(以下、増子)「まさか……の一言でした。誰もが知っている作品だし、その中でもハクは日本女性にとって全員の初恋相手と言っても過言ではないほど人気のキャラクターだとお伺いしまして(笑)。オーディションでその役を勝ち取ったということは、自分の自信にもなりましたが、同じくらい不安やプレッシャーも大きかったです。そんな様々な感情はありつつ、やっぱり単純に嬉しかったですね」
――2022年に行われた舞台の再演となりますが、22年の公演はごらんになりましたか?
増子「観ました。そのときに僕も観客の一人としてすごく感動したことは今も覚えています。舞台だからこそ表現できるパワーを感じる舞台でした。人が実際に演じるパワーや、キャストのみなさん全員から溢れ出るエネルギーがとにかくすごかったんです。『千と千尋の神隠し』の世界観が舞台でこんなに忠実に再現できるということも驚きでしたし、キャストのみなさんの演技はもちろん、舞台の美術などにも目を奪われました」
――誰もが知っているジブリ作品の舞台化ですが、ジブリ作品に関してはどのような思い入れがありますか?
増子「一度観て終わりではなく、何度も見返したくなる作品がたくさんあるんですよね。作品を観ることで、最初に観た頃の自分に出会えるような、そんな懐かしさも感じることができる。この間、帝国劇場の公演に両親が来てくれて、そのときに、僕は3歳くらいまで両親のことをママ、パパと呼んでいたのですが、『千と千尋の神隠し』で千尋がお父さん、お母さんと呼んでいるのを観て、その後から呼び方が変わった、というエピソードを懐かしそうに話してくれたんです。この作品に限らず『耳をすませば』の主題歌の『カントリーロード』を聴くだけでもいろいろと思い出が溢れてくるし、本当にすごい作品ばかりだなと思います。あと僕、宮﨑駿さんと同じ誕生日(1月5日)なんです。それもあって、縁を感じますよね」
――ハクを演じるにあたって、どのように役を作っていったのでしょうか?
増子「ハクはニギハヤミコハクヌシという川の神様(ハク竜)なのですが、それを忘れて魔女の弟子として仕えている設定なんですね。謎が多くどこか冷たい印象のハクが、千尋だけはほおっておけず守ってしまうというところがみんなの胸キュンポイントだと思いました。ただ、あまり役に対して深堀りしすぎると人間味が出てしまうと思ったので、内面というよりはハクらしい上品な所作や神々しい佇まいなど、動き方にはだいぶこだわっています。その上で、唯一こぼれ出てしまう千尋への気持ちを演じる部分は丁寧に表現しています」
――演出を担当されたジョン・ケアード氏から、アドバイスされたことはありましたか?
増子「声量についてですね。マイクに頼らず届くような声でと言われながらも、ハクのセリフは繊細なものが多いので、そのバランスを掴むのが難しいですね」
ハクのように魔法が使えるなら空を飛んで現場入りしたい
――今回の公演でハクを演じるのは、増子さんのほかに醍醐虎汰朗さん、三浦宏規さんの3名のトリプルキャストとなりますが、お二人は2022年の初演からハクを演じています。何人かと同じ役を演じるときは、他の人を意識されることもあるのでしょうか?
増子「演じる人が変わるだけでそれがもうオリジナルの表現になると思っているので、特に意識したりすることはないですね。ただ、自分以外の演技を見ることで、そういうやり方もあるんだなという新しい気づきになることはあるし、真似しようとは思わないですが、彼らの演技を観ていいところがあったら自分も取り入れるのはありだなと思っています。橋本環奈さんとコタくん(醍醐虎汰朗)の組み合わせだった初日はみんなで観たのですが、普通に一観客として楽しみました。僕のハクは、コタくんや(三浦)宏規くんが演じるものとは全然違うと思うので、あまり感化されず自分なりのハクを演じられたらいいなと思っています」
――ハク役の3人でなにか交流があったりとかは?
増子「仲はいいですけど、特に役に関して話したりはしないです。宏規くんとはもともと知り合いだったし、コタくんとも一緒にいる時間が長いので、稽古後などでご飯を食べに行ったりしています。宏規くんとは、稽古でもなかなか一緒になれなかったのですが、ロンドン公演の稽古で久しぶりに会えたんです。そのときは僕の(ハクの)ウィッグ姿を見て爆笑していました」
――ハクは湯婆婆の弟子であり川の神様ですが、役に入るために準備をしたことや意識したことはありましたか?
増子「仲間である川魚は食べないとか(笑)。あまり食べる機会はないんですけどね。あとは、姿勢かな。ハクが片膝をついた姿勢をするんですけど、これって腰を落としていると楽ちんなのですが、背中を真っ直ぐにして腰を浮かせていると、太ももがかなりキツくて。ずっと筋トレをやっているような状態なので、稽古中にかなり鍛えられたと思います」
――ハクは魔法使いの弟子ですが、ご自身がもし魔法を使えるとしたらどんな魔法を使いこなしたいですか?
増子「空を飛べるようになりたい。劇場入りするときとか、家から空を飛んで来られたら楽ちんですよね」
配役の組み合わせによって起こる化学変化を楽しんで欲しい
――今回、主人公の千尋を演じる橋本環奈さん、上白石萌音さん、川栄李奈さん、福地桃子さんの4人全てと共演されるのですか?
増子「そうですね。(橋本)環奈ちゃんとは千秋楽を迎えられたので、これからは、ほかの3名の方との組み合わせになります」
――千尋役の俳優さんが変わると、ご自身の演技も変化したりするんでしょうか?
増子「変わりますね。それが本当にすごいところだなと思います。観ているお客様にもその違いはわかると思います。お芝居の中でハクが千尋の手を取って逃げていくシーンがあるんですけど、手の握り方やその力の入れ方なんかも一人ずつ違うんです。ハクにちゃんとついていく千尋なのか、ハクに引っ張られていく千尋なのかも全く違って。“この世界で生き延びるためにはそうするしかないんだ”というセリフも、千尋のキャラクターに合わせて強めに言ったり、教え諭すように言ったりと全部変わってくるんですよね。萌音ちゃんの千尋がこのセリフで涙を流していたのも印象的でした」
――お互いにお芝居を合わせていく中で、変わっていくものなんですね。
増子「萌音ちゃんの場合は優しく言わないと壊れてしまいそうな千尋で、環奈ちゃんの場合は強めに言わないとわからない千尋だったりするんですよね。それに応じて僕の演技も自然と変わってくるんです。稽古場で一番、一緒に演技をしたのは桃(福地桃子)ちゃんだったので、初日を迎えるのがとても楽しみです。李奈さんは、何度かしかご一緒できなかったので、本番でどんな化学反応が起こるのかとても楽しみです。千尋とハクだけでなく、湯婆婆やカオナシも組み合わせが変わるだけで全く違う舞台になるんですよね。だからこそ面白いし、観ている方も何度でも楽しんでいただけるんじゃないかと思います」
――今までもダブルキャストなどの作品に出演されたことはあるんですか?
増子「『東京ラブストーリー』もそうでした。でも、組み合わせが変わるというのは今回が初めてです」
――組み合わせが変わることで毎回、新鮮な気持ちで舞台に臨めるというのもあると思いますが、その分、毎回緊張してしまいそうですね。
増子「それはありますね。ただ、ロングランでロンドン公演まで演じ続けていくので、自分の中でも新鮮さをキープしながら演じていきたいと思っています」
この記事を書いた人
東京在住のライター・エディター。『smart』『sweet』『steady.』『InRed』など、ウィメンズ、メンズを問わず様々なファッション誌やファッション関連のwebでライター&編集者として活動中。写真集やスタイルブック、料理本、恋愛心理、インテリア関連、メンタル&ヘルスケアなどの本の編集にも携わる。独身。ネコ好き。得意ジャンルはファッション、ビューティー、インテリア、サブカル、音楽、ペット、料理、お酒、カフェ、旅、暮らし、雑貨など。
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