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【水曜日のカンパネラ・詩羽インタビュー】壮絶な半生を初エッセイ本で明かす。マルチな活動で「愛」を伝えたい理由とは?

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水曜日のカンパネラ・詩羽『POEM』(宝島社)

「20歳になったらこの世を去ろう」
翻意につながった1通のDM

――口ピアスはチャームポイントですが、辛いことが多かった高校時代にどういう気持ちで開けたのかが詳しく書かれていました。

詩羽 親になんて言われるかもわからないなかで、誰にも何も言わず自分でとった行動でした。当時は本当に何もかもに負けていて。それでも「20歳までは生きてやろう」と覚悟をして「戦うぞ!」っていう決意の瞬間でもありました。弱い者には厳しい社会だからこそ、強く取り繕うところから始めないと何も変わらないと思って、踏みだした第一歩でした。

――「この世を去ろう」と思っていた20歳を迎える2カ月前に「一通のダイレクトメッセージが届いた」という描写で終わる章がありました。ご自身にとって大きな出来事だったのでしょうか?

詩羽 そうですね、本当にそれがなかったら20歳で終わりだったかもしれないですし……。第3章目のテーマでもある「お会いしませんか」っていう内容のメッセージが、水曜日のカンパネラのDir.F(ディレクター・エフ)からそのタイミングで届いたんです。20歳になる手前にその出来事があったから、気づいたらがむしゃらに動いてて、今22歳になってた……みたいな感じで、時間を過ごしてきました。「それで人生が変わった」とは思っていないんですけど、ただ「それで今があるな」とは思っています。

――すごいタイミングですよね。

詩羽 「人生はタイミング」ってよく言うけど、これのことなのかなと自分でも思いました。

水曜日のカンパネラ・詩羽『POEM』(宝島社)

――かつては「自分は愛される価値のない人間だ」と思っていたとのことですが、今はファンもたくさんいます。そのギャップは、簡単に受け入れられましたか。

詩羽 いや全然まだ受け入れてないです(笑)。なんか面白いな、と思っています。自分が割と主観ではなく客観的に見ちゃうところがあるので「こんなことが人生って起こるんだな」「面白いね」って自分自身に言ってる私がいますね。「愛されてんね」「面白いね」みたいな感じで(笑)。

――壮絶な経験は、糧になっていると言えますか?

詩羽 「(経験して)よかったな」とは微塵(みじん)も思えないけど、糧になってないとは言えないというか。逆に自分が何も経験せずに大人になってたら、それはすごく怖いことだなとは思います。もし自分が恵まれた人間として生きてきちゃっていたら「相手の苦労を少しも理解することができない人間になっていただろうな」とか想像するんです。自分が人の苦労だったりマイナスの部分だったりを受け止められるのは「ちゃんと経験してきたからだ」とは思うので、そういう意味では糧になってるところはあると思いますね。

水曜日のカンパネラ・詩羽『POEM』(宝島社)

「社会にある普通に反発していきたい」
負の中で生きる人に寄り添う一冊に

――幼いころ抱えた傷が大人になっても癒えない人はたくさんいると思います。そうした傷にどのようにしたら向き合えると思いますか?

詩羽 何だかんだそれが本当に一番難しいことだと思います。でも、私自身が経験してきて思うのは、すごく厳しいようだけど「待ってるだけじゃ何も変わらない」っていうことです。自分がマイナスを背負った上で、自分の環境をどう作り上げていくか。結局自分の人生は自分のものでしかないからこそ、大人になっても「どうやって幸せになるか」っていうのを自分自身と向き合っていかなきゃ、過去とも上手に向き合うことってなかなかできないんだろうなと思います。

――一冊を通じて、詩羽さんの活動の動機がよくわかるエッセイでした

詩羽 私が前に立つことで、みんなの中の“社会にある普通”っていうものに対して、反発していきたいなっていう思いがあります。多様性って言葉が使われているけど、それでもちょっと馬鹿にされた使い方をされていると感じることがありますし。多様性なんて言葉がなくても、それが当たり前になっていくべきだなと思ってるからこそ、自分のスタイルだったり活動の仕方だったりが、みんなの環境に活きたらいいなと思って、前に立ってますね。

水曜日のカンパネラ・詩羽『POEM』(宝島社)

――エッセイでは学生時代、「失敗したくない」というリアルな感情が多く書かれていました。いろんな経験を経て、“失敗”や“成功”についてどう考えますか?

詩羽 自分のことを自分で好きになれたらそれが“成功”かなと思ってます。それだけで十分だし、それが一番難しいことだとも思います。“失敗”は(かつての自分にとって)デフォルトだったこともあって、あんまり考えたことはないかもしれないですね。そればっかりだったからこそ、失敗のハードルが下がって、挑戦のハードルも同時に下がりました。ミスってきたことばっかりだったので、ミスることに対する怖さがどんどん減ってきて、この活動してても肝が据わってるのは、失敗しまくってきたからだなと思います。

水曜日のカンパネラ・詩羽『POEM』(宝島社)

――3月16日の武道館はどういうライブにしたいか、想いを教えてください。

詩羽 ライブではいつもみんなに「愛してるよ!」って言っています。私が大きな愛をあげてそれをみんながたくさん返してくれて……っていう「こんな幸せなことはない」っていう空間です。武道館はそれをすごく大きな会場でできる機会だと思ってるので、みんなに改めて愛を伝えたいです!前日に『POEM』が発売されて、言葉の重みがまたちょっと変わってくるんじゃないかなと思うからこそ、目一杯の愛情をみんなに届けて幸せにして、返したいなって思ってます。

――改めて、書籍『POEM』をどんな方に手に取ってもらいたいですか?

詩羽 既に応援してくださってるファンの方には、改めて自分の言葉をちゃんと届けたいからこそ、読んで受け止めてくれたら嬉しいなと思います。そして、私のことをまだ受け入れられてない人たちにも言葉が届いてほしいです。みんなそれぞれの人生がありますし、私の今のこれが正しいかと言われたら私自身もわからないところがあります。「自分の言葉で誰かの人生をガラッと変えてやる!」なんて思っていません。ただ、本当に何があるかわからないからこそ、面白さだったり、面白くなさだったり、いろんなことが人生ってあるよねっていうのを、本当に一つの例として「そんなこともあるんだな」ぐらいで受け取ってもらえたらいいなって。誰かの小さな未来を作る、本当に小さな半歩ぐらい先の未来に繋がったらいいなと思っています。

(了)

Profile/詩羽(うたは)[水曜日のカンパネラ]
2001年8月9日生まれ、東京都出身。2021年9月、水曜日のカンパネラに2代目主演&歌唱担当として加入。22年リリースの「エジソン」がSNSで話題となりMVはYouTubeで5700万回再生を突破(2024年1月現在)。23年には日本のみならず、北京、上海、広州、台北を加えた8都市のアジアツアーを成功させる。24年3月16日、水曜日のカンパネラ詩羽として初の武道館公演を開催。また、音楽活動だけでなく、アーティスト、女優、モデルなどマルチな表現方法で自己表現を行う。23年7月、初出演となる映画『アイスクリームフィーバー』が公開。同年、日本テレビ系ドラマ『最高の教師1年後、私は生徒に■された』でも生徒役で初のドラマ出演を果たし、女優としての活動も広げている。
詩羽インスタグラム:@utaha.89
詩羽X:@utaha_89_id_

水曜日のカンパネラ・詩羽さん初の書籍
『POEM』(宝島社)
24年3月15日(金)発売!

水曜日のカンパネラ・詩羽『POEM』(宝島社)

発売日:2024年3月15日(金)定価:2200円(税込)

写真=斎藤大嗣
インタビュー&文=石野志帆

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この記事を書いた人

石野志帆

石野志帆

TV局ディレクターや心理カウンセラーを経て、心を動かす発見を伝えるライター。趣味はリアリティーショー鑑賞や食べ歩き。海外在住経験から、はじめて食べる異国料理を口にすることが喜び。ソロ活好きが高じて、居合わせた人たちの雑談から社会のトレンドをキャッチしている。

Twitter:@heartsilvermist

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