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「平壌の空港の近くに美味しい焼肉屋があるんだよ」アントニオ猪木が藤原喜明にかけた“北朝鮮への誘い文句”

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利害関係なしで付き合えるのは俺ぐらいしかいなかった

俺は猪木さんの現役の最後や引退後も親しくさせてもらった。まあ、「親しく」なんて言ったら失礼だけどな。猪木さんはスーパースターで、いつでも「アントニオ猪木」でいなきゃいけなかっただろうから、たまには「猪木寛至」に戻りたいんだろう。そしたら、まったく利害関係なしで付き合えるのは俺ぐらいしかいなかったんじゃないか。他の人はちょっと腹に一物があるというか……。イチモツといってもチンコじゃないよ。

猪木さんと一緒に六本木で酒を飲んでる時、なんかの拍子で「藤原、お前は天才だよ」って言ってくれたことがあるんだよ。こっちも酔っ払ってるし、うれしくなっちゃってさ、「いやー、耳障りがいい言葉なのでもう一回言ってください!」って言ったら、「お前は天才だ」って言うんで、「いいなあ、もう一回!」って言ったら、「馬鹿!」ってな(笑)。俺への最後のプレゼントだったのかもしれねえな。たぶん自分の命の終わりがもう近いってことを知ってたんだろ。さっきも言ったけど、最後に会ったのは亡くなる1年前だったんだよな。ユーチューブを撮るってことで「ちょっと来い!」って言われたんで行ってね。収録が終わったあと言われたんだよ。「おい、たまには遊びに来いよ」って。でも、電話で猪木さんから「来い!」って言われたら、「はい!」ってすぐに行くけど、自分から「こんにちは!」なんてずうずうしく行けないだろう。畏れ多いしな。アナウンサーの古舘伊知郎さんなんかは都内に事務所があるから、「ついでに寄りました」みたいな感じで行けるかもしれねえけど、俺は埼玉だから行けねえよ。「いや、近くを通ったもんで」って言ったって、「嘘つくな、コノヤロー」ってな(笑)。

でも、猪木さんと一緒に酒を飲むのは、いつも楽しかったよ。俺のブログに猪木さんと一緒にカラオケを唄ってる写真も載せさせてもらってたな。よく一緒に唄ったね。ズッコさんのお店で一緒にカラオケするようになったのは、俺が60過ぎてからじゃないかな。最初はズッコさんからすごい用心されてたんだよ。だいたい俺の口の聞き方が生意気だからさ。「猪木会長に対してずいぶん馴れ馴れしいな……」みたいな感じだったんだろう(笑)。でも、こっちも変なところで張り合ってな。「あんたも猪木さんのチンコを見たかもしれないけど、俺は風呂場で背中を流しながら、猪木さんのチンコをもう何十年も前から見てるんだよ」って心の中で思ったりして(笑)。

でも、ズッコさんは写真家、アーティストだからね。「あっ、猪木さんがニッコリ笑ってる。これは本物の笑顔だ」とかね、なんかわかるんだろうね。そのうちズッコさんも「藤原さん、藤原さん」って、受け入れてくれるようになったんだよ。猪木さんに何かあるたびに「藤原さん、ちょっと来て!」なんて電話をかけてきたりしてさ。だから「ズッコさんがいろんな人を遠ざけた」なんて言われてるけど、ちゃんとズッコさんは猪木さんに近づけていい人かどうか見極めていたっていうことかもしれないね。おそらく「あっ、この人はちょっと用心しなきゃ」っていう人を遠ざけてたんだよ。要するに嫌われ役を引き受けて、盾になってたね。猪木さんのことを心から思っている、素晴らしい人だったよ。

ズッコさんは膵臓がんだったろ。生前、公表はしてなかったんだけど、俺は気づいてたんだよ。俺の古希のパーティだったか、猪木さんとズッコさんが来てくれたんだけど、その時すでに痩せててね。「あっ、これはがんだぞ……」と思ったんだ。俺も胃がんをやってるから、いろんな本を読んでてわかるんだよ。「たぶんこれは膵臓だぞ……」と思って。「膵臓がんじゃないですか?」って聞こうと思って、言えなかったんだけど。

膵臓がんってすごい痛くて苦しいらしいんだよ。俺の胃がんの手術をやってくれた先生が、膵臓がんの手術の名手でね。でも、膵臓っていうのもフニャフニャで、しかも胃袋の裏側にあるから手術が大変らしいんだよ。だから、あの時、ズッコさんは相当苦しいはずなのに、猪木さんについてわざわざ俺のパーティにも来てくれてね。ホントいろいろ世話になったな。ズッコさんは、命を張って猪木さんに尽くしていた。一説によると、猪木さんはズッコさんが膵臓がんだったことを知らなかったとも言われてるんだよ。猪木さんを心配させないようにしたのかな。もう、2人とも亡くなってるから、そんなことも聞けないけど、ズッコさんだったら自分の病気を教えなかったかもしれないね。すごくいい人なんだよ。それを“ズッコさんの敵”が週刊誌にあることないことベラベラしゃべりやがってよ。「この野郎!」と思ったよ。

猪木さんが亡くなってすぐ、そういう記事が出たよな。記事っていうのは残るからね。無責任なことを言っちゃいけないよな。亡くなった時に、側近同士の揉め事みたいなのが表に出るのは残念だよな。権利がどうのこうのとかさ。猪木さんは最後までたかられて、何度も騙されてな。闘病中に裁判起こされたりして、ホントに嫌だな。話し合いで決めりゃいいじゃねえか。やだやだ。俺はそういうところには関わりたくねえよ。人間同士の付き合いだけでよかったよ。猪木さんのおかげで俺は、普通なら経験できないことも経験させてもらったり、いろんなことを教えてもらったりしたからな。一緒に酒もご馳走になったしね。

猪木さんの前に行くと、本音でしゃべる人がいねえんだよな。やたら変なふうに尊敬しちゃったり、なんか気をつかいすぎてるのかもしれないけど。そうすると、猪木さんも完璧な「アントニオ猪木」を演じざるをえない。でも、「猪木寛至」に戻りたい瞬間もあったんだろうね。だから、気をつかわないでいい俺をよく誘ってくれたんじゃないかな。死ぬまで「アントニオ猪木」として闘い続けた猪木さんが、ほんの一時、やすらげる手助けができていたのなら光栄だよ。今は「本当にお疲れさまでした」「素晴らしい思い出をありがとうございました」という気持ちだけだな。

猪木のためなら死ねる! 最も信頼された弟子が告白するアントニオ猪木の真実

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