「あの時、別の選択をしていたら……」聖なる夜に大切な人の存在に気づける、山谷花純が選ぶマイ・ベスト・クリスマス映画
執筆者: 女優/山谷花純
物語の後半、歳を重ねた今の自分に響くセリフがあった。「転職したいなら、本気でしたいなら、子供を連れて2人で共有したこの家も捨てて、あなたについていくわ。愛している。住所よりずっと大切なことだもの」。このセリフを受けて感じたのは、主人公2人の幸せや愛に求める価値観の違いだった。夢を職にした人の多くは、ジャックへ共感を抱くだろう。私もその一人。仕事への向上心が増すと、とにかく自分を優先する。
愛したい存在が絡むと、夢の上乗せが入る。貯金がこの額まで溜まったら。仕事である程度の地位まで登り安定したら。全ては隣にいてくれる相手と歩む未来を夢見て。いつかきっと”あんな時もあったよね。懐かしいね”って笑い合える日が来るはずだからと、一方的に思い込む。そして、いざ目標到達地点まで来た時に後ろを振り返ると、いるのが当たり前だった人たちがいないと気づく。
「あの時、同じ歩幅で歩けていたら」。今とは別の偉大なる成功物語が描けたのではないかと後悔する。今作で印象的なのは、空港でのシーンのやりとりが、オープニングとラストで立場が逆転していること。その構図から分かることがある。同じ歩幅で歩けなかった2人の現在が対照的なのだ。過去の呪縛を引きずりながら生きるジャック。過去を良き思い出とし、未来へ希望抱くケイト。後悔に対する後処理や、やり方が男女で真逆なのだ。
それは、過去に物凄く傷を負い、きちんと悲しめた者か、傷に蓋をしないと余裕がなかった者の違いなのだと思う。
何かを手に入れるということは、何かを手放すということ。それは真実だ。23年前に公開されたこの作品は、現代を生きる我々若い世代の受け皿として存在し続けていてくれる。これを超えるサンタさんからのプレゼントは、ない気がする。クリスマス。どんなに忙しくても、同じ時間を共有したいと思い合える存在の尊さを改めて確認し合える日。
だから、365日の中でも特別な意味を持つ1日なのかもしれない。手を伸ばせば触れられる距離でその1日を共に過ごせる存在へ、伝えるべき言葉は何なのだろう。エンドロールが終わるまでに見つけて欲しい。
【ストーリー】
1987年。ウォール街での成功を夢見るジャック・キャンベルは、研修のために恋人のケイトに見送られ、ロンドンへ旅立とうとしていた。「ロンドン行きは考え直して。今すぐふたりの人生を始めましょう。」と涙をみせるケイトに「たとえ100年離れていても僕らは変わらない」と答えるジャック。13年後。ジャックは大手金融会社の社長の座につき、お金と地位、欲しいものは全て手に入れ、独身生活を謳歌していた。クリスマスイヴの夜、スーパーに立ち寄った彼は、不思議な黒人青年のキャッシュと出会い、「これから起こることは、あんたが招いたことだ。」と言われる。この言葉の意味がわからないまま、眠りにつくジャック。翌朝、目をさました彼の隣には、13年前に別れたケイトが眠っている。≪いったい何が起きたんだ?≫狐につままれた思いで表に飛び出したジャック。消えた愛車フェラーリの代わりのワゴン車に乗り、マンハッタンのオフィスを目指す。しかし会社にジャックの名前はなかった……。
【キャスト】
ニコラス・ケイジ、ティア・レオーニ、ドン・チードル、ジェレミー・ピヴェン
(C)Beacon Communications LLC
Profile/山谷花純(やまや・かすみ)
1996年12月26日生まれ、宮城県出身。2007年にエイベックス主催のオーディションに合格し、翌年12歳でドラマ「CHANGE」(CX/08)にて女優デビュー。NHK連続テレビ小説「あまちゃん」(13)、「ファーストクラス」(14/CX)など話題作に出演。その後、映画『劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』(18)、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(22)、連続テレビ小説『らんまん』(23)などに出演した。主演映画である『フェイクプラスティックプラネット』(20)ではマドリード国際映画祭2019最優秀外国語映画主演女優賞を受賞するなど、今後の活躍が期待される。
公式Instagram:@kasuminwoooow
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この記事を書いた人
1996年12月26日生まれ、宮城県出身。2007年にエイベックス主催のオーディションに合格、翌年12歳でドラマ「CHANGE」(CX/08)で女優デビュー。NHK連続テレビ小説「あまちゃん」(13)、「ファーストクラス」(14/CX)など話題作に出演。その後、映画『劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』(18)、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(22)、連続テレビ小説『らんまん』(23)などに出演した。主演映画である『フェイクプラスティックプラネット』(20)ではマドリード国際映画祭2019最優秀外国語映画主演女優賞を受賞するなど、今後の活躍が期待される。
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