村上隆がパリで開催中の個展をレポート!パリっ子たちが熱狂する圧倒的な世界観に迫る
執筆者: smart編集部
パリのガゴシアン・ギャラリーでは村上隆さんの個展が開催中(2023 年12月22日まで)。個展のオープニングに合わせて、村上さんも渡仏。パリっ子たちを魅了する展覧会の模様をレポートします。
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村上隆が新しい認知領域への
さらなるメタモルフォーゼ
フランス、ル・ブルジェのガゴシアン・ギャラリーで、村上隆の展覧会が開催中だ(2023 年12月22日まで)。今回の展示でまず注目されるのは、初公開となる500×2331㎝の巨大なペインティング作品「2020 十三代目市川團十郎白猿 襲名十八番」だ。これはかつて、映画監督の三池崇史氏が歌舞伎役者・市川團十郎さんのドキュメンタリー映画を撮影する中で「現代の絵師が描く現代の役者絵を作ってほしい」という依頼を村上が受け、制作したペインティングが元となっている。
ペインティングはその後、2022年11月に東京・歌舞伎座にて「團十郎」襲名の際の祝幕となり、さらに巨大なペインティング作品として制作され今回の公開に至った。また、村上が江戸時代の絵師、曾我蕭白作「雲龍図」(1763)をモチーフとして制作した巨大絵画「雲竜インディゴブルー」(2011)も注目だ。極色彩で描かれた「2020 十三代目市川團十郎白猿 襲名十八番」と対比するかのようなシンプルなブルーのドラゴン。二枚とも周囲を圧倒するサイズでフランスの観客に日本のカルチャーの粋を見せている。
この展覧会のタイトル「Understanding the New Cognitive Domain(新しい認知領域の理解)」とはどういうことか。今回のインスタレーションでは、大作に加え、フラワーやラッキーキャットといった新作NFTペインティングも展示された。さらにオープニングの日には来場者のみに「The Flower Jet Coin NFT」の“ミンティングイベント”も開催された。NFTとは代替不可能なトークンのことで、その技術を使うことで、従来であれば簡単にコピー可能なデジタルデータが、コピー不可能な世界で唯一の作品として証明されるデジタルアート、つまりNFTアートになるということだ。
世界でただひとつということであれば、データであっても紙やキャンバスに描かれたこれまでのアート作品と同様、所有や売買も可能だ。もちろんオークションにもかけられるし、仮想通貨の投資先としても大きな可能性を持っている。“ミンティングイベント”の“ミント”とは、NFTアートを新たに発行すること。つまり初日来場者限定にNFTアートが配られたのだった。展覧会タイトル「新しい認知領域の理解」とは昨今大きなムーヴメントとなっているこのデジタルワールドへのさらなるステップのことなのだ。
一部ではビットコインは2022年に大きく暴落して混乱をもたらしたと伝えられている。だが村上は海外のインタビューで「NFTアートと暗号空間では物事がうまくいっていないので、私の関与は愚かに見えるかもしれません。しかし、これは近い将来に認識されるもう一つの新しい認知領域であると私は本当に信じています」と語り、理解に迷いはない。20年にコロナによるステイホームで、村上は、10代の息子と娘が家でずっとゲームをしていることに気づきを得た。新世代のキッズたちの生活領域の将来性に、新しいカルチャーとなりうる大きな感銘を受けたのだ。村上の提唱し続けているスーパーフラットが、2Dからさらなるメタモルフォーゼを遂げる未来がここに見える。
©️ 2023 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
Photography_Thomas Lannes, RK(IG:@rkrkrk)(portrait)
Text_HISANORI NUKADA
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