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目に見えているものがすべてでは無い~TENGAoneの仕掛ける驚きのアート作品を体感してみよう!

東京・麻布のカイカイキキギャラリーでTENGAoneの新作個展「More Than Meets The Eye」が開催中だ。TENGAoneは、ストリートアート出身のアーティストで、現在はカイカイキキに所属している。そのきっかけとなった村上隆との出会いは、今から約5年前ぐらい前、同じストリート出身のアーティストMADSAKIの紹介で村上の作品作りに参加したことだった。2018年5月にロサンゼルスで開催されたストリートアートのエキシビション「Beyond The Streets」に出品する仕事で、全ての制作が終わった朝にTENGAoneが「ありがとうございました」という御礼のメールを送ったところ、すぐに村上から「展示してみない?」とレスが。いきなりそんな話になるとは思っておらず、一瞬当惑したのだが「そこで躊躇(ちゅうちょ)したらかえって村上さんに悪いし、これはチャンスだと思いました。即決で“やります”と送りました」とTENGAoneは当時を思い出して語っている。
アート,カイカイキキ,TENGAone,村上隆TENGAoneという名前は「画が天職(天画)」であるというところから来ている。彼の作品の特徴はアメリカナイズされた画風にあるが、そのルーツは子どもの時に遡(さかのぼ)る。父親が大のアメリカ好きで、米軍基地の近くに暮らしながらアメリカンな文化にずっと接してきた。

「うちのオヤジがアメリカが大好きで、小さいときから日本のアニメやマンガにはあまり興味がなく、ハリウッド映画、とくにB級ホラー映画などを家族でいつも観ていました。みんながよく知っているような『スター・ウォーズ』から始まって、マニアックなもので言うと『デモンズ』『ZOMBIO/死霊のしたたり』とか本当のグロ系ですね、こういうのをまるで英才教育のように観ていました。兄と当時電信柱に貼られた『死霊のはらわた』のポスターを見て『お兄ちゃん、やってるよ!』なんてことを言う小学生でしたね。とにかくアメリカンジャンクカルチャーが大好きで、B級ホラーの刺激にやられました。アメリカのホラーって、ジェイソン(『13日の金曜日』)なりフレディ(『エルム街の悪夢』)なりと、みんなキャラ立ちしてるんですよね。そういうのがポップで面白かったです」

「川崎の生田緑地で気分をリセットするのがおすすめな理由」軽めの登山ができて岡本太郎美術館もあって…

このような環境で育ったTENGAoneは、14歳でスプレーペインティングを使ったグラフィティの制作を始める。アパレルのグラフィックデザイナー、WEBデザイン会社での勤務を経て、2007年にアーティストとして活動を開始した。
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アート,カイカイキキ,TENGAone,村上隆今回の展示で驚かされるのは、段ボールに描かれた数々のグラフィティスタイルの作品……と思った人は既にTENGAoneの術中にハマっている。作品が描かれた素体はなんと段ボールではなく、MDF木板という堅い木材で、それを加工して段ボール風に見せているのだ。このことについて、もう少し解像度を上げてみよう。展覧会のタイトル「More Than Meets The Eye」という英語の慣用句だが、直訳すれば「目に見えるよりもっと奥深い、隠された何かがある」という意味となる。このフレーズは、TENGAoneが段ボールテイストの作品を制作する時にずっと使っているものである。

「あのタイトルは常に僕が作品を作るときから頭の中にある言葉で、『目に見えてるものが全てではないよ』ということなんです。つまり毎日見ているものでも、角度や見方を変えれば、自分が今まで見ていた景色とは違うものが必ずそこにはあるんです。それだけで世界観が変わるというか、価値観が変わるんだ、ということを見せたいわけです。僕がまだ渋谷、原宿、新宿などでストリートグラフィティと接していたころ、ある日突然それらが目立たなくなってしまいました。ストリートアートって、何もなかったところに落書きをする、その行為ってとてつもなく自己主張が強くてみんなびっくりするはずなんですけれど、ストリートカルチャーのブームがどんどん盛んになると、今度はそれが日常の光景になってしまうんですね。

だからひとつひとつのグラフィティにいちいちみんなびっくりしなくなった。それってあまりにも寂しい。僕はずっとストリートカルチャーと一緒に生きていきたいのに。そうなると、もう周囲に見方を変えてもらうしかない。僕はそこでの体験をインドアに持って行きました。何も知らない人が見て『え、これ段ボールじゃないの』となるだけで、見え方の順番まで変わってくる。要は表に出ている絵よりも素体のほうに興味が先に湧き始めたり、ということ。街に描かれたグラフィティひとつひとつも、角度を変えて見れば『ここにもある、あそこにもある、オレはグラフィティの中に住んでるんだ!』みたいな。感覚になる。それが毎日のスパイスになれば、少しは心豊かに生きられるのでは。ストリートを遊ぶ、日常を遊ぶという自分なりの楽しみ方ができれば、行きたくないバイトや憂鬱な通勤の道のりの中にタグ、グラフィティがあることで、ちょっとほっこりしてもらえればいいなと。そういうことを自分は表現したい」。

と語るTENGAoneは、本展覧会開催にあたり作家からのメッセージとして、

「カービングの段ボールにロボットの絵を描き、手がボロボロになって痛くてたまらない日々です。しかし、それを選んだのは自分自身。では続けるしかないな。今まで辞めることもできたし、他の作品に変えるチャンスもあったに違いない。だから続けるのです。自分の思いと逆を選択するのです」

と制作への決意を寄せている。
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それまでストリートで数々のヤバい体験をしてきたであろうTENGAoneは、そのステージを現代アートのギャラリーに移して、さらなるハードな道を模索している。
アート,カイカイキキ,TENGAone,村上隆展覧会はカイカイキキギャラリーで2022年10月22日(土)まで開催。

©2022 TENGAone/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
Courtesy of the artist and Kaikai Kiki Gallery

写真=坂下丈洋(BYTHEWAY)
文=額田久徳

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