【武尊インタビュー】7年越しの大勝負……時間もかかったし苦しい思いもしたけど、遂に報われるときが来た
撮影当日、ゆったりとした足取りで撮影現場に現れた武尊。世紀の一戦に向け、極限まで絞られた戦士の身からだ体とは裏腹に、その表情は穏やかに見えた。そして彼は語った、静かに闘志を燃やす王者の覚悟と決意の言葉を。
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※武尊選手の撮影、インタビューは4月上旬に行いました。
また、この記事は2022年smart7月号に掲載した記事を再編集したもので、記載した情報もその時点のものです。
時間もかかったし苦しい思いもしたけど、
遂に報われるときが来たなって
――武尊選手には、これまで何度もsmartにご登場いただいていますが、今回は初めて表紙を飾っていただきます。
武尊「昔から読んでいた雑誌なので、その表紙を飾らせていただくのはすごく嬉しいです。撮影もいつも以上に気合いが入ったし、そうしてでき上がった本がお店に並ぶことで、たくさんの方々に目にしてもらえますし。それに衣装も、普段は着ないような派手な柄もあったりして、すごく新鮮で楽しかったです」
――衣装も必見ですね。ちなみにsmartの表紙を格闘家が飾るのは約22年ぶり。当時はファッションと格闘技のシーン同士の距離感がとても近かったんですが、今はどうですか?
武尊「僕も昔からファッションが好きで、〈アンプレセデンテッド〉というブランドをやっていますし、他の格闘家たちも、昔に比べてファッションに対しての感度は高くなっているように感じます。K-1でいえば、地上波でのTV放映がされない中で、注目を集めるために選手たちの衣装が派手になっていたりもします。あとは格闘家の間でもSNSが普及して、私服のファッションが人の目に触れる機会が増えたことも大きいと思います」
――ブランドをプロデュースすること=服作りは、ファッションというカルチャーに“挑
戦者”として立ち向かう感覚でしょうか?
武尊「ずっと格闘技をやってきて趣味の時間を持つこともなかったので、オン・オフの切り替えが全然できていなかったんですが、今は好きな服を作ることで、気持ちの切り替えができるようになりました。そう考えると服作りは“リフレッシュの手段”なのかもしれま
せんね」
――先日(4月7日)の「THE MATCH 2022」記者会見では、シックなブラウンスーツに真っ赤なネクタイ&チーフの合わせがお洒落でした。会見時の衣装もご自身のプロデュースなのでしょうか?
武尊「そうですね。最近は毎回スーツを新調するようにしていて、生地もパターンもイチから作っているんですが、そこにジンクスを取り入れるようにしています。特に色のジンクスは自分の中ですごく重要。絶対に挑戦者カラーのブルーは使わないし、アクセサリーもシルバーでなく金メダルのゴールド。4月の会見のスーツにはラッキーカラーであるゴールドやイエローの意味合いを持たせ、タイとチーフにチャンピオンカラーを差し込みました」
――なるほど。そのジンクスに背中を押されてか、見ていて緊迫感の中にも揺るぎない自信を感じました。そういえば、4月の初旬に行(おこな)っていた合宿はいかがでしたか?
武尊「昨日ちょうど終えて帰ってきたところで、結構追い込んできました」
――ということで、開催日の6月19日が迫ってきました。舞台は東京ドーム、地上波ゴールデンタイムでの生中継も決定(※地上波での生中継はなくなりました)。まさに、武尊選手がかつて憧れたK-1と同じ舞台に立つわけですが、今の心境を教えてください。
武尊「本当にやっとだなって思います。この試合を実現させるまでに時間もかかったし、苦しい思いもしましたが、それが遂に報われるときが来たなって。こういった形で実現できるのはすごく嬉しいですし、だからこそ勝たなくてはいけないと感じています」
――水面下でも、実現するために武尊選手ご自身がかなり奔走(ほんそう)されていたとか。
武尊「最初は(試合実現が)無理なんじゃないかという感じはありました。実現させようともがくほど、両陣営の溝が深くなっていった時期もあったし。それでも実現させることが大事だと考えていたので、(外野から)何を言われてもとにかく耐えて、絶対に実現できると信じて水面下で動いていました」
――選手がリング上からアピールしてマッチメイクに繋がることはよくありますが、スター選手がここまでプロモーター的な動きをするのは稀(まれ)じゃないでしょうか。
武尊「そうですね。僕自身『何でこんなことをやってるんだろう!?』って思っていたくらいですし(苦笑)」
――その甲斐(かい)もあって試合が実現。先日の記者会見では、意外とリラックスした印象を受けました。
武尊「実は、記者会見前日の朝の時点ではまだいろいろと難航していて、会見自体がなくなる恐れもありました。そんな経緯もあって臨んだ記者会見だったので、その辺の気持ちが表れていたのかもしれませんね」
――その際に、ルールの中で未決定だったラウンド数も発表されましたが、あの落としどころはすんなり決まったのでしょうか?
武尊「試合を行うことが第一なので、そこに関して僕は何も口出ししていません。決まったルールのもとで戦うだけです」
――また契約体重58kgなので、武尊選手の本来の階級(60kg)からすると減量は必須。服越しに見てもかなり絞っているのがわかります。
武尊「体重はかなり落としましたが、まだまだ残っていますね。ただ脂肪を落とすだけだと限界があるので、今は筋肉を落として体を小さくする段階に来ています」
――メンタル的にも、これまで経験してきた大会や試合とはまったく違うものですか?
武尊「減量もあるし、今もずっと張り詰めている状態で毎日が恐怖との戦いです。負けたときに失うものがお互いにすごく大きい試合になるので、常に気合いを入れ続けています」
仲間たちの思いを背負って戦って
この試合に勝ち、
“家=K-1”を守らなきゃいけない
――日本だけでなく世界が注目する歴史的一戦になると思いますが、どういった爪痕を残したいと考えていますか?
武尊「これだけお互いがいろんなものを背負って戦う試合ってそうそうないと思うので、その壁を乗り越えていく姿を見せることによって、元気をなくしているたくさんの人たちにも、感動や勇気といったパワーを分け与えられたら嬉しいなと思っています」
――勝利しか見ていないのは当然だと思いますが、その勝ち方の理想はやはりKOでしょうか?
武尊「そうですね。でも今は“勝つことだけ”を考えています。勝つと負けるとでは、本当に天国と地獄ほどの差があるので」
――先ほど“背負うもの”の話もありましたが、K-1のエースとして、K-1という団体への思いを改めて聞かせてください。
武尊「K-1がなかったら、僕も今のような人生を歩んでいなかったと思うので感謝しかありませんし、“自分の家”のような存在だと思っています。今はその“感謝の気持ち”と“団体を背負っている(覚悟と責任の)部分”があるので、そこに住む仲間たちの思いを背負って戦ってこの試合に勝ち、“家”を守らなきゃいけない。そういう気持ちはあります」
――「THE MATCH 2022」はRISEとの対抗戦的な意味合いもありますが、他のK‒1の選手ともそういった話はされますか?
武尊「まだ誰が参戦できるかも全然わからない状態なので、そこまで深い話はできていませんが、『対抗戦をやるなら、絶対に全勝しなきゃダメだよね』という話はしました」
――後輩やこれからK-1を目指す人々に、どんな自分を見せたいと考えていますか?
武尊「僕は、僕ができることをやるだけなので、その姿から何かを感じ取ってくれたらそれでいいと思っています。ただ一つ、今回の試合は“格闘技界を盛り上げるため”に行うつもりなので、試合を観た若い世代たちがこれからの格闘技界を引っ張っていって、今以上に盛り上げてくれたら嬉しいなとは思っています」
――その若い世代の後輩選手もかなり増えてきていると思いますが、武尊選手の後輩に対しての接し方を教えてください。
武尊「試合には“自分は強い、誰にでも勝てる”と信じて挑みますが、かといって自分が強いとは決して思っていません。身体能力も技術も僕より優れた選手はたくさんいると思うし、その中でまだ現役で成長途上の自分が人に教えるのは、ちょっと違うかなぁっていう思いもあって、極力後輩への指導はしないようにしています。人に指摘されて変えるのではなく、自分自身で気づいて変えるほうがいいと思いますし、そこからどうなるかは結局、自分次第なので」
――武尊選手は常に、自分自身を客観的な視点で捉えていますよね。
武尊「子供の頃は、練習でも試合でも勝ったことがなくて、その経験がずっと残っているんだと思います。当時から他の人よりも身体能力で劣っていると感じていたし、才能やセンス(で戦っていくスタイル)じゃないから、他の人よりももっと(練習を)やらないと勝てないと思っていたし、その姿勢は今でも変わりません。だからこそ、こうして勝ち続けていられると思うので」
――少年期の原体験から、強くあるために必要なのは“努力”と“気持ち”であると学び、今もそれが自分自身の根幹にあると。
武尊「そうですね。よく『どうすれば、武尊さんのようになれますか?』と訊(き)かれますが、“今まで生きてきた人生のすべてが、今の僕を作っている”んだと思っています」
――今回は、メディアでの露出もいつもより早くストップしていますし、すでに臨戦態勢に入っていると見てよろしいでしょうか?
武尊「いつもは試合直前までやっていますが、地上波TVでの生中継もあるし(※地上波TVでの放送はなくなりました)、これだけ注目されている状態ができ上がっているのでもう十分。あとはこの試合に勝つことだけに集中しないと意味がないので、今回初めてマネージャーに『今回はこれ以上、仕事をやりません』と言いました」
――最後に、並々ならぬ思いで戦う6月19日の大一番に向けて、読者へのメッセージをお
願いします。
武尊「この試合を一人でも多くの方に観てもらいたいし、格闘技やスポーツが好きじゃない人にも観てもらいたいです。こうして特集してもらえるのもすごく嬉しいことですし、ファッションから僕を知ってくれた人たちにも“格闘技の面白さや素晴らしさ”が伝わったらいいなと思っています。最高の試合をするので、ぜひ皆さんに観てもらって応援してもらえたら嬉しいです。絶対に勝ちます!」
Profile/武尊
たける●1991年7月29日生まれ、鳥取県出身。日本武尊(やまとたけるのみこと)にちなんで「武尊」と名づけられ、小学2年生から空手を始める。2011年にKrushでプロデビュー。13年に初代Krushフェザー級王座、15年に初代K-1 WORLD GPスーパー・バンタム級王座、16年に同フェザー級王座を獲得。18年には同スーパー・フェザー級王座を獲得し、K-1史上初の三階級制覇を達成。K-1GYM SAGAMI-ONO KREST所属
武尊公式インスタグラム
武尊公式ツイッター
本記事が掲載されたsmart7月号は全国の書店、コンビニはもちろん、宝島チャンネルはじめ、Amazon、セブンネットショッピングなど各インターネット書店でも好評発売中です。“令和最強の両雄”の今を切り取った、永久保存版のスペシャルファッションシュートは是非誌面を手にとってお確かめください!
モデル_武尊
写真_森 健人
スタイリング_TEPPEI
ヘアメイク_小園ゆかり
インタビュー&文_TOMMY
インタビュー&編集_熊谷洋平
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