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【那須川天心インタビュー】6 月19 日が自分にとって “ 人生最後の日” になると思っている。そして、二人三脚で歩んできた父と、“父の日”に――。

シャッターを切る音に合わせてシャドーをする那須川天心。時に真剣に、時に不敵な笑みを浮かべつつ、打ち出される拳は速度を増していく。気合い十分の臨戦態勢に入った不世出(ふせいしゅつ)のエンターテイナーが語るのは、背水の陣の覚悟だ。

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※那須川天心選手の撮影、インタビューは4月下旬に行いました。
また、この記事は2022年smart7月号に掲載した記事を再編集したもので、
記載した情報もその時点のものです。

那須川天心

ライダースジャケット¥319,000、ボンテージパンツ¥59,400 /ともにダイリク d.dairiku@gmail.com、T シャツ¥7,150 /ボット( ファミリーファースト info@bott2019.com)、スニーカー¥55,000 /リク チュール☎ 03-6419-7530

6月19日が自分にとって
“ 人生最後の日” になると
思っている

――SNSで圧倒的なフォロワーを誇る天心選手も、ファッション誌の表紙は初なんだそうですね。

那須川天心(以下、天心)「紙媒体では初なので、やっと時代が僕に追いついたなと(笑)。やっぱり嬉しいですよね。格闘技とはまた違ったカルチャーの人たちにも注目してもらっているというのは、すごく光栄なことだなと思います。撮影も楽しかったし、スタッフさんの気もよくて、一緒にいいモノが撮れた感じがしました」

――SNSを拝見しても、天心選手はファッション関係者、特にストリートシーンにお知り合いが多いですよね。

天心「HIDDY(ヒディ)さんやVERDY(ヴェルディ)さんとは特に仲よくさせてもらっています。僕自身、ストリートのファッションや考え方が好きなので、必然的にそういうスタイルにはなってきていますね。格闘家も最初から有名な選手なんていなくて、何者でもない状態から成り上がっていくじゃないですか。そういう意味では通ずるモノもあるのかなと思います」

――また、天心選手のインスタ投稿に、西日本ファッション界の重要人物である「イマジン」の谷篤人(あつひと)さんが、必ず“いいね!”をしている点も、ファッション誌的目線では見逃せません。

天心「そうなんです。谷さんもすごく格闘技が好きで、大阪に行った際にお世話になったり〈ゼパニーズクラブ〉も着させてもらっていたりしていて、非常にありがたいです」

――そんな天心選手のファッションにおけるポリシーを教えてください。

天心「やっぱり繋がりのある人や仲間たちの作る服を常に着ていたいし、あとは自分が好きでイケてるなぁと思うモノを意識的に着るようにしています。その際に“周りと被らない”というのも重要。服も髪型も“自分の色”があっていいんじゃないかというスタンスで、ファッションを楽しんでいます」

――今回着用していただいた赤のフーディと白のTシャツは、天心選手も好きなブランド〈ボット〉のデザイナーが今回の撮影のために特別に作ってくれたスペシャルアイテムでした。こういった旬のブランドやトレンド情報は、普段からどうやって得ているんですか?

天心「周りにいるデザイナーの方や仲間に聞いて知ることが多いですね。デザイナーがどういった信念や思いを込めて服を作っているのかを聞くと『ここの服を着たいなぁ』って。やっぱり格闘技だけでなく、どこの世界でも“信念”が一番大事だと思うし、それを強く持っている人たちとは波長が合うみたいです」

――それでは本題に。「THE MATCH 2022」の話も聞かせてください。開催日まで残り2カ月を切りましたが、今の心境はいかがですか?

天心「あっという間だなぁという感覚はあります。これまでは試合前のメディア活動もたくさんしていましたが、今回は試合にだけ集中していますし、“6月19日が人生最後の日で、負けたら死ぬ”と思いながら日々を過ごしています」

――そこまで自分を追い込んだ経験はこれまでありましたか?

天心「ないかもしれません。そこまで考えたこともないですし。格闘技って白黒がハッキリしすぎているので、この試合に勝つか負けるかで今後の人生も変わってきますし、勝たないことには何も始まらないなと思っています」

――会場となる東京ドームは、音楽・スポーツ界にとってもですし、日本を代表するエンタメの聖地です。やはり天心選手にとっても特別な場所でしょうか?

天心「そうですね。僕が格闘技を始めた頃は、格闘技では後楽園ホールを満席にするのも難しいのに、隣の東京ドームで同日開催されているコンサートは満員どころかグッズ販売の行列までできていたりして。『なんだこれ!? 俺のことなんて誰も知らないのに……』って悔しかった記憶がすごく鮮明に残っています。そのときに誓った『いつか自分も成り上がって、絶対に東京ドームを満員のお客さんで埋めてやる!』という願いが今現実になるどころか、それ以上のことになっているじゃないですか。今やエンタメ業界、いや、日本を動かしている感覚さえあります」

――史上最高額のチケット価格でありながら入手困難という点も話題になっていますが、ABEMA格闘チャンネルでも配信されますし、地上波TVでも試合は生中継されます(※地上波TVでの放送はなくなりました)。

天心「なので、(力を込めて)とにかく観てもらえたら嬉しいですね。この試合をやることで僕と武尊選手のような志を持った選手が増えてくれることが、僕の一番の願いです」

――歴史に残るビッグマッチですし、格闘技ファン以外で観る方も多いと思いますが、この一戦でどんな爪痕を残したいと考えていますか?

天心「いろいろな想いはありますが、捉え方は人それぞれ。ファッションもですが『格好いい』と言う人がいれば、一方で『格好よくない』と言う人もいて当然。むしろお互いの意見をぶつけ合って、どんどん盛り上がってほしいですね。全員が全員ポジティブに見てもらえるわけではないと思うので、だったら少しでも賛否を巻き起こしたい。賛否両論あってこそいいモノは生まれると思っているので、そうなってほしいし、社会現象にしたいと思っています」

【那須川天心インタビュー】6 月19 日が自分にとって “ 人生最後の日” になると思っている。そして、二人三脚で歩んできた父と、“父の日”に――。

シャツ¥69,300 /チルドレン オブ ザ ディスコーダンス (スタジオ ファブワーク☎03-6438-9575)、パーカ 参考商品/ボット ( ファミリーファーストinfo@bott2019.com)、パンツ¥10,000 /ヴィンテージ ( アンサムチル☎ 03-6303-3206)、スニーカー/スタイリスト私物

6月19日は父の日。
これまで衝突することも
あったけど、
すべては「この日のためだった」

――そういう意味では勝ち方も重要になると思います。やはり狙うはKO勝ちですか?

天心「それが誰から見てもわかりやすいし、やっぱりKOが格闘技における最高のパフォーマンスですからね。キックボクシングでの最後の試合になるので、これまでの集大成として自分のすべてを出し切って、誰が見ても『スゲェ!』と思ってもらえる試合をしたいです」

――期待しています。お二人の物語は、天心選手が武尊選手に対戦を直談判した2015年11月から始まりました。今、もし当時の自分に言葉をかけるなら何と声をかけますか?

天心「何ですかね……『お前の人生、最高だぞ!』ですかね。そして『だから、今(試合を)やるべきじゃないぞ』って言いたいです」

――長い時間を経た今だからこそ、これだけ最高の舞台が整ったわけですもんね。

天心「最近だと『ONE PIECE』でも、ルフィが食べた悪魔の実の謎が遂に解明されたじゃないですか。それくらいの伏線だと思うんですよ。もしくは『進撃の巨人』のラストと同じくらいストーリーが詰まっていると思うので、格闘技の最高潮をみんなに観てもらいたい、感じてもらいたいと思っています」

――そういえば先日(4月7日)の記者会見のときに着ていたピンクのスーツは、ご自身のオーダーですか?

天心「春だし、俺が桜になろうかなって。衣装に関して、自分の中でのテーマは毎回あります」

――でも、それをあえて語らない。

天心「今の世の中は答えがあふれすぎていると思うんです。ネットで調べれば何でも出てくる反面、一部だけを切り取ったモノが答えとして出回ってしまったりもして。でも、そうではなく含みや余白の部分を考察するのが楽しいし、それによって人は豊かになれると思っているので、そこは常に意識しています」

――生粋(きっすい)のエンターテイナーですね! 今回の一戦で格闘技を初めて観戦する方も少なくないと思われます。

天心「いずれ日本の歴史に刻まれる出来事になると思うので、そういった方々にも『観ておいて損はないよ』と伝えたいですね」

――日本エンターテインメント史に残るでしょうね。天心さん自身はこの大会のどういった部分に期待していますか?

天心「団体はいろいろとあるけど、『みんなこれを機に仲よくいこうよ』っていう、それだけですかね。格闘技に限らず、どの世界でも仲間割れや対立って絶対にあるわけじゃないですか。その和解のキッカケとして、お互いが歩み寄ることの大切さを知ってほしいなって」

――今後はボクシングに転向されるわけですが、アスリートとして格闘家としてご自身のピークは、まだまだ先だと考えていますか?

天心「そうですね。格闘家人生はまだ今後も続きますが、キックボクサーとしては今回が最後。なので、ここで今の自分のすべてを出し切るべく、地元・松戸のジムで毎日、トレーナーである父と二人三脚で練習しています」

――自身の原点に立ち返って。

天心「しかも、またこれが運命的な話で、自分にとって人生最後の日になるかもしれない6月19日は父の日なんですよ。それを知ったときに、自分の中で腑(ふ)に落ちたんですよね。これまで父とは、トレーナーと選手という立場で意見が合わずに衝突することもあったけど、それも『あぁ、この日のためだったんだ』って」

――その話はお父さんともされたんですか?

天心「もちろん言ってはいません。smartを読んで知るなんて、すごくスマートな伝え方じゃないですか!?」

――そこまで考えているんですね……さすがです。今後の夢や野望、または那須川天心の完成形についても教えてほしいです。

天心「完成形はまだ自分の中でも見えてきていません。タイミングを決めて終わらせるのは苦手で。15歳でリングデビューして、最初は10年後の25歳(で引退する)って決めていたんですが、『でも、まだ辞められないなぁ』と思うようになっていって。自分で言うのもなんですが『自分の天職は格闘家で、他のことはやれないなぁ』って。なので、とことんやるしかない。それで、ふとした瞬間に『あぁ、やり切ったな』って思うんじゃないですかね。ただ、格闘技が嫌いになったら辞めようとは思っています」

――その日が来ることはなさそうですね。

天心「ですね。5歳からやってきて一度も苦と思ったこともなく、ずっと好きですし。もう、そういう運命なのかなぁって思っています」

――最後に読者へメッセージをお願いします。

天心「こうして初めてファッション誌の表紙を飾れたことで、はじめましての方もいると思いますが、今後この那須川天心という名前がいやでも耳に入ってくることになると思うので、今から注目しておけば古参(こさん)ファンになれます(笑)。実際、そうなれるように頑張るし、6月19日の試合も絶対に勝つので応援してください。そして今度は僕一人で表紙を飾るので(笑)、そのときにまた会いましょう!」

Profile/那須川天心
なすかわ・てんしん●1998年8月18日生まれ、千葉県出身。「天のような大きな心を持ち、感謝の気持ちを忘れない人間になってほしい」との願いから天心と名づけられる。5歳で極真空手を始め、2014年にRISEでプロデビュー。15年にBLADE FC JAPAN CUP-55kg優勝、RISEバンタム級王座、16年にISKA世界バンタム級王座、18年にRISE世界フェザー級王座を獲得。TARGET/Cygames所属。
那須川天心公式インスタグラム
那須川天心公式ツイッター

本記事が掲載されたsmart7月号は全国の書店、コンビニはもちろん、宝島チャンネルはじめ、Amazonセブンネットショッピングなど各インターネット書店でも好評発売中です。“令和最強の両雄”の今を切り取った、永久保存版のスペシャルファッションシュートは是非誌面を手にとってお確かめください!

モデル_那須川天心
写真_森 健人
スタイリング_TEPPEI
ヘアメイク_TAKAI
インタビュー&文_TOMMY
インタビュー&編集_熊谷洋平

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