連載真説 星野仙一 ~誰も知らない“鉄拳制裁”の裏側~

「私は殿堂入りパーティーに呼ばれなかった」権藤博が語る“星野仙一の最期”と、最後まで埋まらなかった二人の距離感

執筆者: ノンフィクションライター/長谷川 晶一

星野の現役最晩年に一軍投手コーチを務めた名伯楽・権藤博

「燃える男」として、球界を盛り上げた

 その後、星野と権藤の交流はほぼ途絶えた。野球人としてグラウンドで会うことはあっても、それ以外ではともに過ごす時間はほとんどなかった。最期に会ったのは星野が亡くなる1年ほど前だったという。

「最期に会ったのはハワイ・ワイアラエのゴルフ場だったかな? たまたま一緒になったんだけど、“もうハーフプレーしかできない、腰が痛くて歩けない”なんて言っていたし、かなり体調が悪そうだった。それから半年ぐらいかな、“星野が亡くなった”という連絡をもらったのは……」

 2017年12月、東京、大阪で殿堂入り記念パーティーが開催された。多彩な交友関係を持つ星野ならではの二都市開催だった。しかし、権藤はこの会に出席していないという。

「だって、呼ばれていないもの。案内状もないのに出席することはできないから」

 ともにエースナンバー「20」を背負った、ドラゴンズの先輩・後輩である権藤は、殿堂入りパーティーに招待されていなかった。権藤は続ける。

「現役時代から含めて、私はいろいろ知っているから、星野にとっては煙たい存在だったんですよ……」

 小さく笑った後、権藤は改めて「星野が球界に遺したもの」を語り始めた。

「星野が野球界に残した最大のものは、《燃える男》として面白い野球を見せてくれたことだと思います。長嶋(茂雄)さんが《ミスタープロ野球》で野球界を盛り上げたのとはまた違った形で、野球界を大いに盛り上げた。そして、監督として、中日、阪神、楽天を優勝させたのは《燃える男》の真骨頂だったと思いますよ」

 このコメントを受けて、「星野仙一をひと言で表現するならば?」と問うと、しばらく考えた後に権藤は小さく言った。

権藤博が考える星野仙一とは?――“闘将”

星野の現役最晩年に一軍投手コーチを務めた名伯楽・権藤博

「星野をひと言で言い表すならば……、そうだな、《闘将》というのが、ふさわしいんじゃないかな? 《名将》というよりは、やっぱり《闘将》というのが星野らしいな。ああいうタイプの監督は珍しいと思いますよ」

 かつて、毎日オリオンズ、阪急ブレーブス、近鉄バファローズを率いた西本幸雄もしばしば「闘将」と呼ばれている。西本を尊敬している権藤に、「星野さんも、西本さんも、《闘将》と呼ばれていますね」と水を向けると、権藤は小さく笑いながらつぶやいた。

「西本さんは本物の《闘将》、愛のある《闘将》。だけど、星野の場合はちょっと違う。愛もへったくれもなく、“とにかく勝ちたい”という、真の意味での闘う監督。その点は微妙に違うと思いますよ(笑)」

(次回・嶋基宏編に続く)

Profile/権藤博(ごんどう・ひろし)
1938年12月2日生まれ、佐賀県出身。鳥栖高校からブリヂストンタイヤを経て、1961年に中日ドラゴンズ入団。1年目から25勝、防御率1・70で最多勝利、最優秀防御率のタイトルを獲得。さらに、新人王、沢村賞に輝く。翌62年も最多勝となり、チームの大黒柱となる。当時、連投に次ぐ連投で、「権藤、権藤、雨、権藤」という流行語も生まれたが、右肩を痛め、68年限りで引退。その後は、中日、近鉄、ダイエー、横浜で投手コーチを歴任。98年に監督に就任すると、横浜ベイスターズを38年ぶりの日本一に導く。2019年に野球殿堂入り。現在は野球解説者。

Profile/星野仙一(ほしの・せんいち)
1947年1月22日生まれ、岡山県出身。倉敷商業高校、明治大学を経て、68年ドラフト1位で中日ドラゴンズに入団。気迫あふれるピッチングで、現役通算500試合に登板し、146勝121敗34セーブを記録。現役引退後はNHK解説者を経て、87~91年、96~2001年と二期にわたって古巣・ドラゴンズを率いる。02~03年は阪神タイガース、07~08年は日本代表、そして11~14年は東北楽天ゴールデンイーグルスで監督を務める。17年、野球殿堂入り。翌18年1月4日、70歳で天に召される。

インタビュー&文=長谷川晶一
撮影=大村聡志

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この記事を書いた人

1970年生まれ。早稲田大学卒業後に出版社へ入社し、女子高生雑誌『Cawaii!』などのファッション誌の編集に携わる。2003年からフリーに。ノンフィクションライターとして活動しながら、プロ野球12 球団すべてのファンクラブに入会する「12 球団ファンクラブ評論家®」としての顔も持つ。熱狂的な東京ヤクルトスワローズファンとしても知られ、神宮球場でのホームゲームには全試合駆けつける。単行本が7刷となり文庫化もされている『詰むや、詰まざるや 森・西武 vs 野村・ヤクルトの2年間』(単行本:インプレス、文庫:双葉社)をはじめ、ヤクルト関連の著書・連載多数。スポーツ総合雑誌『Sports Graphic Number』(文藝春秋)にも定期的に寄稿中。日本文藝家協会会員。

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