「燃える男」はハッタリだった……。名伯楽・権藤博が今明かす、投手・星野仙一が“広島戦”を避けて“巨人戦”にこだわった驚きの裏事情
執筆者: ノンフィクションライター/長谷川 晶一

監督とGMの視点を持つ男
星野は82年シーズン限りで現役を引退する。通算500試合に登板して146勝121敗、防御率は3・60という成績だった。名伯楽として、多くの一流投手を育てた権藤から見た「投手・星野」のすごさとは何か? その見解は明快だ。
「パフォーマンスを含めて、《燃える男》の見せ方は超一流でした。普通なら、あそこまで闘志をむき出しにして投げることはできないですよ。打たれたら恥ずかしいから。それができるのが星野のすごいところでもあるし、逆に言えば弱さなのかもしれない。たいした球じゃないことを自分でもわかっていたから、ハッタリでごまかすことが上手だった」
権藤の解説は続く。
「あの球威で150勝近くも勝ったということは立派ですよ。彼は自分を強く見せることも、自分のモチベーションを高めることも上手だった。でも、もっと自己管理ができていたら、あと20勝はできていたんじゃないか。大卒の場合、大学1年、2年の頃は必死に練習をする。でも、3年、4年になると練習をしなくなる。星野なんて、プロでもほとんど練習しなかった。肩が張っていればマッサージで治すだけ。鍛えて治すという発想はなかったから」
「投手・星野」について辛口の批評が続いた。しかし、「監督・星野」について尋ねると、その口調が一変する。
「監督としての星野は別格ですよ。すごいと思います。“これを使えば勝てる”という選手の見極めができる。“ここが足りない”と思えば、どこかから獲ってくる。半分は監督でありながら、半分はGMとしての目も持っている。中日でも、阪神でも、楽天でも優勝を経験したのだから運も持っている。監督としては超一流だと思います」
手放しでの絶賛が続いた。自身も1998(平成10)年には横浜ベイスターズを日本一に導いている権藤だが、「星野と自身の違い」について尋ねると、その表情が曇った。
「彼の場合は、《これ》がちょっと多すぎたよ……」
右手の拳を握りしめながら、「これ」と、権藤は言った。
この記事を書いた人
1970年生まれ。早稲田大学卒業後に出版社へ入社し、女子高生雑誌『Cawaii!』などのファッション誌の編集に携わる。2003年からフリーに。ノンフィクションライターとして活動しながら、プロ野球12 球団すべてのファンクラブに入会する「12 球団ファンクラブ評論家®」としての顔も持つ。熱狂的な東京ヤクルトスワローズファンとしても知られ、神宮球場でのホームゲームには全試合駆けつける。単行本が7刷となり文庫化もされている『詰むや、詰まざるや 森・西武 vs 野村・ヤクルトの2年間』(単行本:インプレス、文庫:双葉社)をはじめ、ヤクルト関連の著書・連載多数。スポーツ総合雑誌『Sports Graphic Number』(文藝春秋)にも定期的に寄稿中。日本文藝家協会会員。
お問い合わせ:smartofficial@takarajimasha.co.jp
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