「甲本ヒロト、鳥肌が立った音楽の原体験を語る」ニルヴァーナ、レッチリ…ロックの原点に見た“わけ分かんない感動”の正体
執筆者: 編集者・ライター/高田秀之
最後に聞く「90年代ってどんな時代でしたか?」

――ピストルズ的な、ガーゼシャツとかボンデージパンツにはいかなかったんですか?
ヒロト:ボンデージは履いた。ガーゼシャツも友達が持ってたものを譲ってもらって着たことはある。デビュー前だね。でもあのときのガーゼシャツは、のちの日本のパンクショップで売ってたようなやつじゃなくて本物の、ヴィヴィアン(・ウエストウッド)のやつだったと思うよ。
――まだ持ってます?
ヒロト:どっかにあるんじゃないかなー。分厚いんだよ、ガーゼが。ペラペラじゃないんだよ。
――ジョニー・ロットンのファッションに憧れた人は多かったですけどね。
ヒロト:アンダートーンズには誰も憧れなかったけど、僕、見たときに、「これだ!」と思った。
――何かがきたんですね。
ヒロト:ビンビンにきた。今でも1stアルバムはよく聞くし、「teenage kicks」って曲はバイブルですね。歌い出しの文句が“10代の夢を舐めんなよ”っていうの。
――かっこいいですね。
ヒロト:カッケー。10代の夢は手強いぜ、やっつけてみろっていう。やっつけられないんだよ、10代の夢は。それを10代のときに聞いたからね。
――他にファッション的に憧れた人っていますか?
ヒロト:見た目でかっこいいと思ったのって、誰だろう。あ、ストラングラーズも好きだった。ヒュー・コーンウェルみたいになりたかったけど、ヒュー・コーンウェルになるにはパーマかけなきゃいけなくて、僕の髪の毛はまっすぐだから無理だった。ヒュー・コーンウェルの、あのリアルな労働者風の髪型がカッコよかった。何もしてない、一晩留置場に入れられてたみたいな髪型。
――最近のファッション傾向はどんな感じですか?
ヒロト:あんまり買いに行かなくなりましたね。何人か友達ができて、そういうところを覗いたりとか。ロックTシャツはいっぱい欲しいんだけどね、昔みたいに売ってないし、かっこいいやつはヴィンテージで高いし、それも違うんだよな。
――ヴィンテージTシャツのブームがきましたからね。
ヒロト:ま、かっこいいから好きなんだろうし、ブームになるっていうことにはちゃんと理由があって、それは素敵なことだと思うけどね。僕はブームだろうがなんだろうが、ロックTシャツ好きだから。
――そういえば90年代はストーンズが『Voodoo Lounge』をリリースしましたね。
ヒロト:いいアルバムですね。あれはすごくいいと思う。もしかしたら、さっきのロックンロールが90年代に元気になったことが、ストーンズにも影響を与えた可能性がある。ミックもキースも空気をとらえる感覚はすごいから。確か『Voodoo〜』の前か後にミック・ジャガーが『Wondering Spirits』を出したんだよ。どっちが先だっけ?ちょっと調べてみて。僕の感覚では『Wondering〜』なんだけど。
――『Wondering Spirits』は93年でした、『Voodoo Lounge』が94年。
ヒロト:でしょ!その時系列が大事なんです。ミックジャガーのソロに、僕、全然期待してなかったの。それまでのソロ聴いて、やっぱりストーンズのほうがいいなと思ってたけど、『Wondering〜』聴いたら、めちゃくちゃよくて、これならストーンズいらないじゃんって思った。ミック1人でこれできるなら、もしかしてストーンズのメンバーが足引っ張ってんじゃないかと思ったぐらい。でも次の『Voodoo〜』が出たら、さらにすごかった。ってことはミック自身がそのときにもう上がってきてたんだよ。で、バンドが同じようにバチって決めた。だから『Voodoo〜』はいくつかあるストーンズのピークの一つだと思う。最高です。
――当時の若いバンドからの影響もあっただろうと。
ヒロト:かもしれない。空気を感じてたかもしれない。ライブも初来日より遥かによかったし。
――無理やりまとめますが、では90年代ってどんな時代だったと思いますか?
ヒロト:あの、捨てたもんじゃねえなと思わせてくれた時代です。諦めなくていいんだな、よし、俺たちもいっちょうやったるかっていう気にさせてくれたのが90年代です。
甲本ヒロトが表紙を飾った過去のsmart

1998年5月4日&18日号

1999年6月14日号

2001年9月17日号

2002年11月25日号
Profile/甲本ヒロト(こうもと・ひろと)
1963年生まれ。1987年にザ・ブルーハーツのボーカリストとしてシングル「リンダリンダ」、1s tアルバム『THE BLUE HEARTS』でメジャーデビュー。1995年にラストアルバム『PAN』を発表し、解散したのちに、同年、真島昌利らとザ・ハイロウズを結成。8枚のアルバムを発表し、解散。2006年にザ・クロマニヨンズを結成する。メンバーは甲本ヒロト、真島昌利、小林勝、桐田勝治。10/29に18 thアルバム『JAMBO JAPAN』が発売される。また、11月からは全国ツアーもスタート。
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Photography_KEISUKE NAITO
Styling_HIROTO KOHMOTO
Interview & Text_HIDEYUKII TAKADA
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この記事を書いた人
流行通信社、ロッキング・オン社をへて、1990年に宝島社入社。Cutie編集長ののち1995年にsmartを創刊。2024年に退社し、現在はフリー。
Instagram:@htakada1961
Website:https://smartmag.jp/
お問い合わせ:smartofficial@takarajimasha.co.jp
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