「甲本ヒロト、鳥肌が立った音楽の原体験を語る」ニルヴァーナ、レッチリ…ロックの原点に見た“わけ分かんない感動”の正体
執筆者: 編集者・ライター/高田秀之
「ファッション誌を読むのは、そこに載ってない服を買うため」
――97年にはフジロックも始まって、ロックフェスが広まりました。普段は出演する側ですが、観客として行くこともあるんですか?
ヒロト:フジロックは大好きですよ。ニール・ヤングが来た年に観客として行ったんだけど。あれは、もう一生忘れられない。その日の昼間に見たパティ・スミスがあまりに素晴らしくて、もうお腹いっぱいだからニール・ヤング見ないで帰ってもいいやぐらいの気持ちで見たんだけど、2時間以上のステージで、途中ギターの弦が一本一本切れていって、最後の「Like a Hurricane」で1本だけ残った弦を弾きながら歌い始めたときにはどかーんって盛り上がった。ステージは2時間〜3時間だったけど、もっとやってほしかった。ここで死んでもいいからもっと見たいと思ったもん。
――じゃあ、それは久々のガツーンだった?
ヒロト:きましたねー、あれは。それで、ハイロウズはフジの1回目の年に出演して以来、何年間か参加できてなかったんだけど、このイベントならお願いしてでもやりたいって思った。
――さっき、流行の移り変わりの話が出ましたけど、そういうのって意識しますか?
ヒロト:いや、流行りを意識することはないけど、そういう服しか売ってなかったりするからね。
――昔のインタビューで「ファッション誌を読むのは、そこに載ってない服を買うため」って言ってましたよね。
ヒロト:ああ、そういう恥ずかしさはある。どっか照れがあるんだよね。今年の色はこれとか書いてあると、その色の服を掴もうとしたときに、これ書いてあったな、照れるなって、掴まない。ほんとはそれすら意識しないのがかっこいいんだけど、つい日和っちゃうんですね。それもダサいんだけど。
――スタイルは昔から変わらないですよね。
ヒロト:テイストがあるのかもしれない。でも今日はリングとかしてるけど、若い頃、20代の頃は何にもつけなかったよ。腕時計もしなかったし。全部嫌いだった。
――アクセサリーとかも。
ヒロト:嫌悪していた。
――無駄なものはつけたくなかった?
ヒロト:いや、おしゃれぐらいカッコ悪いことはないと思ってたから。おしゃれをするという行為がカッコ悪いと思ってたから。それも日和ってるんだよね。意識しすぎ。
――人の目を意識しすぎ?
ヒロト:そう、自意識過剰。
――意識しなそうですけど。
ヒロト:そう思われようとしてるんだよ(笑)。
――実は気にしいってことですか?
ヒロト:そう、気にし過ぎて、何だこいつ?みたいなこともある。昔、武道館でライブをやったとき、僕が前の日に着てた服のまま寝て、起きて、そのままステージに立ったのを驚かれたことがある。鏡も一度も見ないで、髪の毛も寝ぐせのまんまだったらしくて。
――めちゃくちゃかっこいいじゃないですか。
ヒロト:それは、僕なりのカッコつけだったんですよ。カッコつけてると思われたくないから、寝て起きたまんま行ったっていう。ライブの衣装を着て寝たわけじゃないですよ。あとは、単に洋服をそんなに持ってなかったし。
――前にレイ・デイヴィスが「ロックンロールっていうのは朝起きたときに一番上に積んである服を着ることだ」って言ってましたけど。
ヒロト:それもそういうカッコつけ方なんだと思う。だってその発言、かっこいいじゃないですか。そういうことです。レイ・デイヴィスも大好きです。「キンクス・ガット・ミー」という曲もあるよ。
――デニムはラモーンズを意識してるとも言ってましたけど。
ヒロト:ラモーンズっていうかね、正確にいうとアンダートーンズなんです。中学生のときにまだ全然知らなかったアンダートーンズのアルバムをジャケ買いしたんだけど、そのジャケットの写真が、スターが着る服じゃなく、本当に普段着のように見えたんです。まさに、前の日から着てた感じ。
ちょっと前の『グッド。ヴァイブレーション』っていう映画で、当時のアンダートーンズが活動していたシーンが描かれてるんだけど、まわりのバンドが「俺たちの中で一番ダサい服を着てるあいつらがなんであんなに人気なんだ」って笑ってるの。本当にそうだったんだって(笑)。もしかしたらブルーハーツのときの僕の出立ちはアンダートーンズだったのかもしれない。アンダートーンズの1stアルバムを見てみて、何か通じるものがあるから。(セックス・)ピストルズでもクラッシュでもない。
この記事を書いた人
流行通信社、ロッキング・オン社をへて、1990年に宝島社入社。Cutie編集長ののち1995年にsmartを創刊。2024年に退社し、現在はフリー。
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お問い合わせ:smartofficial@takarajimasha.co.jp
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