【たまに会う惑星】 モノンクル吉田沙良×CRCK/LCKS小田朋美が語る新作とシンガーの孤独 AI時代に「楽しい」を追求する理由とは互いのリリースライブも迫る

執筆者: 音楽家・記者/小池直也

AI時代、楽しまなきゃ意味ないね

【たまに会う惑星】 モノンクル吉田沙良×CRCK/LCKS小田朋美が語る新作とシンガーの孤独 AI時代に「楽しい」を追求する理由とは

――先日、AI音楽サービスのUdioがユニバーサルミュージックとパートナーシップを締結したのを皮切りに、同じくAI音楽サービスのSunoもワーナーミュージックとライセンス契約を果たしました。2025年はテクノロジーや精度の向上と権利関係の整備という点において特筆すべき年となりましたが、これについてはシンガーとしてどう思います?

小田:もう人かAIかは判断できなくなるかもしれないですね。

吉田:わからないと思う。Sunoで遊んだことありますけど、めっちゃボーカルがいいんですよ。普通に「このAIシンガーのファンになりたい」って思うくらい。そこに反対する気持ちはなくてシンプルにすごいと思いました。

小田:魅力があるってことだよね。

吉田:そうなんです。でも生活があって、感情があるなかで、その日しか出ない声がある。それをAIと比べる必要はないのかなと。何かを「好きでやっている」ということがすべてですから。だから特に何を思うっていうこともなくて。

小田:自分が感動するものは、エネルギーや気を発してるものだっていう気持ちがあるのですが、AIが登場したことで、自分が何にエネルギーを感じて感動するのかを改めて分析できるようになるんじゃないかなと思ってます。あと最近、真似事に終始している表現を見ると「AIみたいだな」と思うようになって、逆に、人間に求めるハードルが高くなってきているような感じもしたり。

吉田:今はまだAIが新しい技術だから違和感があるけど、これが完全に定着して当たり前になったらと考えると……。人間とAIの境界線を自分で考えて、見つめ続ける時代になっていくのかも。

小田:生のピアノってデジタルのキーボードと比べて情報量が膨大じゃないですか。だから人生で最初にキーボードに触れたとき「これは弾けないや」と思ってたの。でも慣れると全然弾いちゃうんですけど(笑)、たまにピアノに帰ってくると「やっぱりピアノはすごいな」と感じるので、行き来するのも大事なのかも。

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吉田:だからこそライブは大事ですよね。

小田:うん、ほんとに。ただイギリスで2022年から開催されているABBAのバーチャル公演「ABBA Voyage」に知り合いのミュージシャンが何人か行ったらしいんですけど、感想を聞くと「感動した」という声が多かったんです。演奏は生演奏らしいけど。

そのなかのひとりは同行した人がホログラムだと知らずに、本物のABBAが演奏していると最後まで思っていたらしくて。これはミュージシャンにとって憂鬱になるような話でもあるけど、楽しむ方法はいくらでもあると思う。

――今まさに私のようなライターの存在がChatGPTなどの生成AIに揺るがされていますが、シンガーや音楽家にとっても厳しい時代なのかもしれません。

小田:そうだとしたら、余計に楽しいことをやってないと意味がないってなるよね。

吉田:楽しいことをやる、楽しいから生きていると思えなかったら鬱になってしまうかも。

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――モノンクルは12月5日に代官山UNITでリリースライブ、CRCK/LCKSもリリースツアーの千秋楽が12月8日にSpotify O-EASTで開催されますね。これについて最後に教えてください。

吉田:レコーディングに参加してくれたメンバーでお届けします。客演してくれたAAAMYYYさんとDaichi Yamamotoさんも駆けつけてくれる予定です。モノンクル的には誰かをフィーチャリングすること自体が初なので、かなり貴重な日になるなと思ってます。

小田:好き勝手録音したものをライブでどう演奏するのか、私自身も「どうなるんだろう?」という感じです。録音再現ライブではないのでほとんど人力になりそうなんですが、ライブでしか聴けないアレンジになっていくじゃないかなと思ってます。みんなのエネルギーを爆発させる場所にしたい。楽しみにしててください。

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Profile/吉田沙良(よしだ・さら)
ユニット“モノンクル”のボーカル担当。
桐朋学園高等学校音楽科クラシック声楽科専攻、洗足学園大学でジャズを学び、自身のバンド“モノンクル”を中心に活動する傍らPUNPEE, VaVa, OMSB ‐ Wheels feat. 吉田沙良(モノンクル)への客演をはじめ、DaichiYamamoto、冨田ラボや現在のミュージックシーンで注目される様々なプロジェクト(小西遼率いる象眠舎/LAGHEADS)に参加するなど、それぞれのコラボレーションも例年以上に積極的に展開している。

CMソング、TVアニメや映画の劇中歌やナレーション、舞台役者やモデルやなど、現在に至るまでジャンルレスな活動をしてきている。

モノンクルは2011年結成からこれまでに5枚のアルバムをリリース。フジロックFES’15を始め、CottonClub、BlueNoteTokyo、恵比寿LiquidRoom等で単独公演をsoldoutさせる等、その幅広いジャンルを超えた音楽が注目を集めている。

Instgram:@sarayoshida
X:@sara_vocal

Profile/小田朋美(おだ・ともみ)
神奈川県生まれ。作曲家、ヴォーカリスト、ピアニスト、シンセシスト等として音楽に携わる。

ソロ活動をはじめとし、CRCK/LCKSのメンバー、UA、KIRINJI、cero、三浦透子、二代目高橋竹山のサポートメンバーとしてのライブ活動や、映画『東京喰種2』『ファブル2』『素敵なダイナマイトスキャンダル』『サマーフィルムにのって』『青葉家のテーブル』、NHK Eテレ『天才てれびくん Hello,』など映像への楽曲提供も多数。現在、3作目となるソロアルバムを制作中。

Instgram:@odatomomimimi
X:@oto0909

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取材協力/葉花
東京・奥渋で営業している花屋。店内に一歩入ると、まるで都会のオアシスで花の色彩だけでなく心地よい香りに驚く。ドライフラワーや雑貨もあり、カジュアルなプレゼントにもぴったりだ。デートや友達同士はもちろん、ひとりでいくのもおすすめ。渋谷の散歩ついでに立ち寄ってほしい。

Instagram:@887habana
X:@887habana

撮影=松嶋希七
インタビュー&文=小池直也

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この記事を書いた人

音楽家/記者。1987年生まれのゆとり第1世代、山梨出身。明治大学文学部卒で日本近代文学を専攻していた。自らもサックスプレイヤーであることから、音楽を中心としたカルチャー全般の取材に携わる。最も得意とするのはジャズやヒップホップ、R&Bなどのブラックミュージック。00年代のファッション雑誌を愛読していたこともあり、そこに掲載されうる内容の取材はほぼ対応可能です。

X:@naoyakoike

Website:https://smartmag.jp/

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