時代遅れの「男らしさ」はもういらない。 40代テレビマンがロールモデルと推す小説家・燃え殻が体現する“しなやかな大人の余裕”とは?
執筆者: ライター・コラムニスト/ミクニシオリ
「男としてのかっこよさ」というものは、この数十年で様変わりしたように感じる。渋さとか、ハードボイルドなんて言葉は今や死語に近くなっていて、今は「男らしさ」という言葉を口にするだけでも、ネットで論争になりかねない時代だ。
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しかし、そんな現代に「しなやかな男らしさを体現している人がいる」……そう教えてくれたのは、現場一筋・テレビ業界に20年以上身を置いている40代の男性。
「イケメンの本棚」をのぞき見していく本連載で今回紹介したいのは、本を勧めてくれた彼と同じく、テレビ業界出身の小説家・エッセイスト、燃え殻さんの新刊『これはいつかのあなたとわたし』(燃え殻著・新潮社)だ。
燃え殻『これはいつかのあなたとわたし』の読みどころ
- 活字慣れしていない人にも親しみやすい短編エッセイ
- 昭和〜平成的な男らしさから解放される「抜け感」のある文体
- 何かを批評しないでことの大切さが学べる
「なんでもない日々」を受け入れる度量が自分にあるか

43歳で作家デビューした燃え殻さん。今やいくつものメディアでエッセイやコラムの連載を持つ人気作家だ。
「彼の本を初めて読んだとき、テレビ業界という、男臭さを煮詰めた業界に長く身を置いていて、こんなに柔らかく、精神的余裕を感じさせる文章を書ける人がいるのかというカルチャーショックを受けました」……そう話してくれたのは『これはいつかのあなたとわたし』をおすすめしてくれた40代テレビマンの男性だ。
『これはいつかのあなたとわたし』は、週刊新潮に掲載されていたエッセイをまとめたもので、一編がとても短く、読みやすい。単行本にして、1遍のエッセイがだいたい4ページ。普通の本のように一気に読まずとも、気が向いたときにちょっとずつ読み進められる気軽さがいい。
「内容は、一言で言うと燃え殻さんの“なんでもない日々についてのアレコレ”といったところです。幼少期から大人になった今までの、くだらない1日の話や、ちょっとした知り合いとのよもやま話。オチなんて特にない話も多いんですが、そこがいい。燃え殻さんのエッセイには、彼の人間性や人生感が色濃く反映していると思うんですが、試しに彼女や、女友達にもおすすめしてみたところ、女性にもウケがいいようです」
テレビマンの言う通り、燃え殻さんのエッセイの文体は、どこか「やれやれ感」というか、諦観のようなものを感じる。日々の出来事を「あるがままに」捉えているように思える文章は、ネットの発展もあって、人の目が気になりすぎる時代を生きる現代人の肩の荷を、そっと下ろしてくれる。
「他の本もそうなんですが『これはいつかのあなたとわたし』の中にも、男っぽい視点の話もあるんですよ。学生時代のバカな男友達の話や、男ならではの不器用な恋愛の話。だけど、燃え殻さんの文章にはいい意味で、男の矜持みたいなものがあまり感じられないんですよ。
誰でも一定、あるじゃないですか。男としてこう見られたいとか、男なんだからこうしようとか。燃え殻さんも、エピソードの中では“仕方なく”そう振る舞っているように見える瞬間もあるんです。だけど、頑張りすぎていない。本の中で最も印象的だったエッセイに“勝つことにも負けることにも慣れてきた”という一文がありました。男って、何歳になってもうまく諦めるのが苦手な生き物だと思うんで、この一文を見たときに、彼が僕のロールモデルになったんですよね」
この記事を書いた人
ファッション誌や週刊誌、WEBメディアなどで幅広く活動。女性向けのインタビュー取材や、等身大なコラム執筆を積極的に行う。いくつになってもキュンとしたい、恋愛ドラマと恋バナ大好き人間。
Website:https://smartmag.jp/
お問い合わせ:smartofficial@takarajimasha.co.jp
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