【村上隆】率いるカイカイキキ所属・AYA TAKANOがロサンゼルスで個展開催…無意識と宇宙を描く最新作に注目
執筆者: smart編集部
今月は米国のギャラリー「ペロタン・ロサンゼルス」で8月29日まで開催していたAYA TAKANOの個展をご紹介。個展を訪れた人たちのSNSも盛り上がっており、AYA TAKANOが創り出す作品の世界に癒やされ、パワーを得る人たちが後を絶たなかったようです。
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資本主義から抜け出し、共生、慈悲、至福の神話を作る
アメリカのギャラリー「ペロタン・ロサンゼルス」で、カイカイキキ所属アーティストのAYA TAKANOの11回目となる新作展覧会「how deep how far we can go」が開催された。タイトルは直訳すると「どれだけ深く、どこまで行けるか」で、精力的に創作を発表しているAYA TAKANOのさらなる新しい世界に触れることを示唆するものだ。
本誌でも何度か紹介しているTAKANOだが、前回の掲載は2024年11月、東京麻布のカイカイキキギャラリーでの個展「銀河の神話よりも長くalternative future」。同展のテーマは自然回帰であり、現在と未来とを並べ、行きすぎた文明社会から原始社会への回帰、いや進化を問うものだった。
さて、今回の作品を見てみよう。新作絵画とインスタレーションで構成されたラインナップは、これまでのTAKANOの追求しているテーマである「宇宙や生物の謎、意識の謎」をさらに深く掘り下げたものであり、よりインナーワールドへの深化を感じさせる世界観となっている。とくに今回開催されたアメリカ西海岸はヒッピー、コンピュータ文化の聖地であり、スティーブ・ジョブズをはじめとして、東洋的な精神世界との親和性がとても高い地域だ。またロサンゼルスでは直近、大規模な山火事が起きていて、TAKANOの紡ぎ出す不思議な世界は傷ついた人たちの心のよりどころとなるという一面もあるかもしれない。
TAKANOはこの個展に際してインタビューで次のように語っている。「個人的には資本主義から抜け出すような、共生や慈悲や至福の神話を作ってほしいと願っています。それを促すような展覧会にしたいと思いました」。
共生や慈悲も、とくに現在のアメリカではトランプ大統領の打ち出す政策は、それらとはかけ離れたものだろう。対立が生み出す社会の分断にはたくさんの人たちが心を痛めていて、TAKANOもその中の一人だ。しかしこうも語っている。「すべての人の無意識の、本当に深い部分や身体の中に、叡えい智ち があると信じています」。
叡智という言葉を使ったが、タイトルに使われた“deep”という文字がキーワードだ。無意識下の深層心理の中にこそ叡智は隠されているとTAKANOは読む。世界、とくに西側諸国は新自由主義という神話に支配されつつあり、この神話は最終的には誰も幸せにしないだろう。しかしTAKANOの描く新しい神話とは何か。それは本展覧会で示されたTAKANOのナラティブ、古代からこの星に生きるすべての生物のDNAに深く刻み込まれた、ATフィールドなんか取り払った、その先の男も女も関係ない、人も動物も混在となる融合による共生の世界なのかもしれない。その域を目指すことこそが叡智なのだ。
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Photography_Paul Salveson
Text_Hisanori Nukada
©2025 AYA TAKANO/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved. Courtesy Perrotin.
※この記事は2025年smart10月号に掲載した記事を再編集したもので、記載した情報もその時点のものです。
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