「ジャズ警察から集中砲火される覚悟で」“25年の仲”SOIL社長 × 長岡亮介が語る「Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN」への意気込みジャズ初心者にオススメの曲も紹介
執筆者: 音楽家・記者/小池直也
永遠のテーマ「What is JAZZ?」
――さらに「ジャズ」という言葉自体も人によって豪華なビッグバンドのサウンドだったり、映画『BLUE GIANT』だったり、椎名林檎さんだったりとイメージがバラバラではないですか? しばしば国内外でSNSで「正当なジャズは何なのか?」と論争にもなります。
社長:それは永遠に答えのないテーマ。「ジャズって何だろう?」と思って生きていくのがカッコいいとか、「Jazz is an attitude(ジャズは生きる姿勢だ)」という人もいます。
長岡:僕は詳しく知りませんが、ただでさえいろいろなタイプのジャズがあったのに、ここ最近の数十年でさらに細分化してるような気がします。今までになかったジャズも出てきているように感じますし、余計に実態のわからない言葉ですよね。
――何となく「オシャレな音楽」という印象もあると思います。
社長:ありますね。ジャズプレイヤーもスーツをびしっと着ているような。
長岡:太いスラックスにサスペンダーみたいなイメージもある。
社長:でも、そういうカッコよさを今も維持しているのはSANABAGUN.の高岩遼君くらいじゃないですか。
――反対に「難しい音楽」とか「面倒くさい」というネガティブな印象を持つ人もいるとか。
長岡:僕も長年「昔のジャズプレイヤーは怖い人が多そう」と思ってました。音にこだわるがゆえに厳しいというか。
社長:僕はステージで演奏はしないから多少、客観的になれるんだけど(笑)、ほとんどのジャズは基本的に即興芸術。だから演奏者も現場で鳴っている音に没入しているし、何かが噛み合わずに上手くいかなかったときの気持ちの折れ方は強いかも。
長岡:楽譜に書いてない部分も多いし、道なき道を全員で探り当てるような音楽ジャンルだなと感じます。
社長:あとジャズには100年以上の歴史があって、年代によって主流が変わるんですよ。既にあるものを壊して次のトレンドが生まれる。そんな破壊と創造が繰り返されるのも面白いところ。
ここ10年くらいはヒップホップと接近して、現在はジャズとヒップホップのアーティストがゼロから一緒に制作するのが当たり前になりました。その代わりに原理主義なジャズポリスもいますけど。
――確かに。だから「Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN」になぜNe-Yoが出るのか理解できない人もいるかもしれません。
社長:歴史を知れば点と点が繋がっている、と理解できるのかなと思います。
長岡:ジャズポリスが納得するものだけだとシーンが進んでいかない、という面もありますね。それによってまた畑が耕されるみたいな。
――その一方で20年代や、さらに過去のジャズがカッコいいというリバイバルの動向もあります。それについてカントリーを学ばれている長岡さんはどう思います?
長岡:古いものが今に響くということはあるんじゃないかな。
社長:カントリーの発祥ってどこだっけ?
長岡:1920年代にバージニア州ブリストルで発祥したと言われてるね。
社長:時代的に考えるとジャズが生まれて育っていた時期と重なるな。
長岡:たぶんどちらのコミュニティにも出入りするミュージシャンがいたんだと思います。新しい音楽っていろいろな要素が混ざったときに生まれるじゃないですか。カントリーの「ブルーグラス」という音楽の花形でバンジョーという楽器があるんですけど、あれも本来アフリカの楽器みたいですし。
社長:初期のジャズであるニューオーリンズのスタイルでも使われてたね。
――これからジャズを聴きたいZ世代にどんな音楽を勧めますか。
社長:入口になるような懐の深さでいうと、やっぱりロバート・グラスパーかな。切り口が広いし、敷居も高くないし、いろいろな曲をカバーしてます。歌があったほうが聴きやすいという人にはホセ・ジェイムスがいいかな。興味が湧いてきたら昔のものまで掘ってもらえたらと。
長岡:ジャズは本当にわからないので人選ミスだと思っているのですが(笑)、カントリーの始祖のひとりであるジミー・ロジャーズはオススメです。彼からはジャズの香りがする。ジャズやカントリーとジャンルが分かれる前の雰囲気はこんな感じだったのかなと。
この記事を書いた人
音楽家/記者。1987年生まれのゆとり第1世代、山梨出身。明治大学文学部卒で日本近代文学を専攻していた。自らもサックスプレイヤーであることから、音楽を中心としたカルチャー全般の取材に携わる。最も得意とするのはジャズやヒップホップ、R&Bなどのブラックミュージック。00年代のファッション雑誌を愛読していたこともあり、そこに掲載されうる内容の取材はほぼ対応可能です。
Website:https://smartmag.jp/
お問い合わせ:smartofficial@takarajimasha.co.jp
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