村上隆が「SHOGUN 将軍」チームと“夢殿”を建てた…!アメリカ美術界のど真ん中で魅せた新境地の裏側
執筆者: smart編集部
昨年京都で開催された大規模個展「村上隆 もののけ 京都」以降、2025年はガゴシアン(ニューヨーク)、クリーブランド美術館(オハイオ州)と北米での個展が続いている村上隆さん。今月の連載では、現在開催中のクリーブランド美術館での個展についてご紹介します。
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『SHOGUN 将軍』チームも参加した「夢殿」の建造
オハイオ州クリーブランドミュージアムで村上隆の個展「Takashi Murakami: Stepping on the Tail of a Rainbow」が2025年9月7日まで開催中だ。この美術館は全米でも屈指の規模で、なおかつ日本美術のコレクションは、ボストン美術館やメトロポリタン美術館に匹敵する量と質という、日本文化を知る上で最適と言ってよく、そのような場所での開催には大きな意義がある。
タイトルの「Takashi Murakami: Stepping on the Tail of a Rainbow」、直訳すれば「虹の尻尾を踏む」だが、これは約10年前に村上がニューヨークのガゴシアンギャラリーでの展覧会のために描いた群仙図の作品のタイトルから来ている。展示内容を見てみると、新作もあるがそれ以外にこれまで村上が作ってきたたくさんのアート作品が集められていて、さながら村上隆の芸術変遷コレクションのようにもなっている。
もちろん最近の展覧会では恒例のようにもなり、毎回多くの話題を呼んでいる、限定トレーディングカードも先着50,000名に無料で配られたのだが、なんと言っても今回の展覧会最大のハイライトは『SHOGUN 将軍』チームによる「夢殿」の建造だろう。『SHOGUN 将軍』は2024年からディズニープラスで配信され大ヒットしたアメリカのドラマだ。主演の真田広之は役者だけでなくプロデュースにも名を連ねており、そのため作品は外国人が見たおかしな日本ではなく、日本人が見ても違和感のない作りになっている。村上はこれをリアルタイムで視聴、その美術に大きく感銘を受け、とうとう日本のスタジオにプロデューサーのジャスティン・マークスと脚本家のレイチェル・コンドウを招いてしまったほどだ。
そんな縁で夢殿は『SHOGUN 将軍』チームのプロダクトデザイナーであるヘレン・ジャーヴィスによって作られた。八角円堂の夢殿は、もともとは天平時代に聖徳太子の遺徳を偲んで創建されたとされ、聖徳太子が眠るという伝説を持つ場所だ。そこには人々を苦しみから救う力があると伝えられている。下手をすると内戦の危険もあるこの混沌(こんとん)とした現代アメリカでの展覧会に夢殿のような場所を作ってみるというのは、安寧を願う人々の祈りを反映するものなのかもしれない。
アメリカから帰国した村上は自身のラジオ番組で「齢(よわい)63にして現代美術シーンをなんとかここまで生き残れたが、芸術の一番いいところは、死ぬギリギリまでがアーティストの旬であるというところだったりする」といった主旨のことを語った。村上のリスペクトして止まない宮﨑駿は齢80を近くにして『君たちはどう生きるか』を作りオスカーを受賞している。村上隆にもさらなる高い次元の創作を期待したい!
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Photography_Joshua White(Still), David Brichford(Portrait)
Text_HISANORI NUKADA
Ⓒ2025 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
※この記事は2025年smart8月・9月合併号に掲載した記事を再編集したもので、記載した情報もその時点のものです。
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