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AV女優、作家、犬の飼い主。「紗倉まな」 という生き方が詰まったエッセイ集『犬と厄年』を語る「友達は3人」「犬の名前は秘密」…“赤裸々トーク”が刺さる

執筆者: 音楽家・記者/小池直也

文章を視聴覚のどちらで味わう?

6年ぶりのエッセイ集『犬と厄年』を発表した紗倉まな

――その貴重な友人と学生時代の先生から読書の楽しみを教えてもらった、というエピソードもエッセイに出てきます。

紗倉:やっぱり影響力はありました。それまでは理系の高専に通っていたこともあり、理工系の専門分野に特化したものばかりを読んで「本は勉強のためにあるものだ」と思っていたんです。

でも友人が心して渡してくれた桜庭一樹さん著の『少女七竈と七人の可愛そうな大人』を読んで、桜庭さんの作品にドハマりして。遅めではありましたが、そこから小説に興味を持つようになりました。

文学をやるならば古典的な作品をも当然網羅している、という風潮があるので、現代文学ばかりを読んできた私としてはそういった主張をされる方の話を聞くと、「今からではもう追いつけない……」というコンプレックスを感じます。それもあって、文学にまつわるテーマのお話をしなければならない場に行ったときはいつも震えています(笑)。

――そういった遅咲きの読書体験が、固めだけど、柔らかみもある文体に活きているのかなと思います。「呪詛」などの固い言葉が並びつつ、括弧付きで「おったまげ~」と入れるセンスがユニークで。

紗倉:文体は出力するデバイスによって変わりますね。iPhoneで書くエッセイのほうがカッコつけずフラットな気がします。「よく見せたい欲」を出さずに書けるといいますか。

このスタイルはnoteのデザインの雰囲気に合っているのですが、なんせ長いですし自由に書きすぎていたこと、そして連載などと違って校閲も一切入らないので、読者の方々にどう思われるかが不安でした(笑)。Z世代の「(わかんの)みほ」という言葉を最近知って驚きましたが、私は平成のスラングが好きなんです。

6年ぶりのエッセイ集『犬と厄年』を発表した紗倉まな

――インプットについてはいかがでしょう? 最近はひとつの物語を本で読むのか、Audibleなどの音声で聴くのか、漫画で読むのか、映像で見るのかの選択肢が増えています。

紗倉:それは私も考えていることのひとつですね。最近とある機会に総合病院でIQの検査をしたんですよ。

日本で一般的ものだと「言語理解」(言葉を理解したり説明する能力)/「知覚推理」(視覚情報をもとに推理する能力)/「ワーキングメモリー」(聴覚をもとに考えたり推理する能力) /処理速度(単純な作業を素早く正確に行う能力)の4つの平均が自分の知能指数とされるんですね。

私は耳で得る情報がとにかく苦手で、仮に邦画であっても字幕をつけないと聞き逃してしまうことが多かったり、会話の中でも主語を省略されると一気についていけなくなる瞬間があって。

――文章理解のほうはいかがですか。

紗倉:文章だとすぐに理解できるんですよ。先ほどのIQの話で言いますと、「ワーキングメモリー」以外のIQはすごく高かったんです。なので視覚による情報処理と、聴覚による情報処理とのIQの差も大きかったんです。個人的には腑に落ちましたし、面白い体験でした。Audibleで聞くのは好きなんですけど、私の場合は字幕が付いていたほうがいい、と感じてしまうのでやはり活字で読むほうが好きなのかもしれないです。

その一方で活字で読むのは無理だけど、ラジオみたいに聞くなら入ってくる人もいますよね。だからいろいろな感覚にアプローチするメディアが広がってきて、選択肢が広がっているのはすごくいいなと感じています。

6年ぶりのエッセイ集『犬と厄年』を発表した紗倉まな

――どれが自分に合った入力方法なのか探すのも面白いかもしれません。

紗倉:知人は仕事などで読まなきゃいけない本がある場合、途中までは活字で読んでから読み上げ機能を使って家事をしながら聞くみたいです。

この記事を書いた人

音楽家/記者。1987年生まれのゆとり第1世代、山梨出身。明治大学文学部卒で日本近代文学を専攻していた。自らもサックスプレイヤーであることから、音楽を中心としたカルチャー全般の取材に携わる。最も得意とするのはジャズやヒップホップ、R&Bなどのブラックミュージック。00年代のファッション雑誌を愛読していたこともあり、そこに掲載されうる内容の取材はほぼ対応可能です。

X:@naoyakoike

Website:https://smartmag.jp/

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