“肉体派舞踏集団”FULLCAST RAISERZ・KID TWIGGZが今思うこと「クランプが人生を支えてくれた」ボディメイクはゴールドジムで
執筆者: 音楽家・記者/小池直也
自分を救ってくれたクランプに恩返しを
――チーム内でどんな話し合いをされたのかが気になります。
KID TWIGGZ:「クランプの作品」という観点でいえば、確実に世界でもトップクラスの作品を生み出していると自負しているんですよ。それに昨季までの4年間チャンピオンシップ(CS)に出場していたし、負けない気持ちも持ち合わせています。
ただ今シーズンはルール変更をきっかけに、見えていなかったチームの弱点を突かれるシーズンだなと。今までは審査員がどちら側を選ぶかでしたから、モットーである「人の心に刺さる踊り」で魅せられれば、拮抗(きっこう)した勝負をバイブスで物にできていたと思うんです。
でも今季からステージングやスキルなど、項目ごとの審査になって。ジャッジの心に刺さっても審査が動かなくなった。シビアに観られたときに、僕らのエネルギッシュさの反面にある粗い部分が目立ってしまったのかなと。
――なるほど。
KID TWIGGZ:ダンスにおいてはバイブスと各項目の両面が大事だというのは理解しているんです。そこを改善しながら戦ってはいるんですね。でもなかなか勝利に繋がらないのが現状。ただ今まで何となく切り抜けていた部分に負けを経て気が付くことができました。
――細かく分析されているなと感じました。
KID TWIGGZ:チームで分析はかなりします。ただ「ステージング」の項目は小道具や演出、照明の使い方などを見られるのですが、アイテムを使ったショーケースでも勝てなかったんですよ。あのときは「なぜ獲れないんだ?」と話し合っても答えは出ませんでした。それでもメンバーで話し合って、自分たちに足りないものを考えながら、時にぶつかりながら走っています。
――チーム内の雰囲気はいかがですか?
KID TWIGGZ:全然いいですよ。長年の付き合いのあるメンバーが多いので、とっくに仲が悪くなるレベルは超えてます(笑)。何か本音をぶつけ合っても、終わった後は一緒にランチしてる感じなので。
――並行して参加されているチーム・RAG POUNDとしての活動についても聞かせてください。D.LEAGUEとの両立はいかがですか?
KID TWIGGZ:大変ですね(笑)。先日は台湾のダンスバトル番組「S+PLUS」にも出させてもらって決勝まで行きました。やっぱり自分たちが主催しているクランプの大会「KING OF BUCK」も含めて、クランプやダンスシーンの後進のためにいろいろな可能性を作りたいという気持ちがあります。
クランプを頑張ってプロになりたければD.LEAGUEという道もあるし、アーティストになりたければRAG POUNDという道もある。まだまだ世の中的にはマイノリティなジャンルをブレイキンなどと並ぶ存在にしていきたい。自分も楽しみつつ、次の世代に夢を与えていければ。
――それは、ご自分もクランプに夢を与えてもらったということがある?
KID TWIGGZ:ありますね。大学1年生のときにクランプを始めたのですが、その矢先にずっと病気だった母が亡くなったんです。目の前が真っ暗になった出来事なのですが、そのときにマメに連絡を取ってくれたり、母の墓参りまで来てくれたのがRAISERZの初代ディレクター・Twiggz “JUN”さんでした。
クランプの「ファミリー」というカルチャーが自分の人生を支え、励ましてくれたんですよ。だから自分もこのダンスをいろいろな人に伝えて、人生を変えられるような経験をしてほしいと思ってます。
――リーグのなかで注目しているチームは?
KID TWIGGZ:どのチームもライバルなのですが、特に意識が強くなるのはKOSÉ 8ROCKS。リーグ立ち上げ以降、ともにCSで戦ったりと歴史を重ねてきました。最近は負け越しているので「どうやったらクランプで勝てるか?」と考える、基準のような存在ですね。
この記事を書いた人
音楽家/記者。1987年生まれのゆとり第1世代、山梨出身。明治大学文学部卒で日本近代文学を専攻していた。自らもサックスプレイヤーであることから、音楽を中心としたカルチャー全般の取材に携わる。最も得意とするのはジャズやヒップホップ、R&Bなどのブラックミュージック。00年代のファッション雑誌を愛読していたこともあり、そこに掲載されうる内容の取材はほぼ対応可能です。
Website:https://smartmag.jp/
お問い合わせ:smartofficial@takarajimasha.co.jp
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