「本当の私は“まひる”じゃない。太陽が嫌いで雨が好き」甲田まひるが語る恋愛やネガティブを超える秘訣本当に自由なのは音楽よりもファッション
執筆者: 音楽家・記者/小池直也
「ジャズだけやれ」と言われたら絶対やらない
――甲田さんの制作からはネットやSNSなどで今ウケのいい方法論にとらわれず、既存にないものを試行錯誤して生み出そうという意志を感じます。その辺はいかがですか。
甲田:便利なものを追いかけたり、新しいものを吸収するほうが人気の音楽を作れる可能性は高くなると思います。でも私は昔から音楽も服も好きなのは古いものばかり。そうじゃないと信じられないんですね。だから周りのスピードがめちゃめちゃ早い気がして、たまに置いてかれるような気分になります。でも焦らずに、自分の好きなものを吸収して進むことが大事だと信じてますよ。
――古いもののどこに惹かれるんです?
甲田:もともと母がインドを放浪するようなバックパッカーで古着好きだったんです。その影響で新品よりも誰かが着古した服のほうが好きになりましたね。そこから始まって音楽だとレコード、と広がった感じ。服は古着、ジャズなら古典的なビーバップが好き、偶然だけど好きなものは全部古いものでした。
誰かの歴史とかストーリーがある、というだけで素敵なこと。それを思うと昔のサウンドが心に沁みてきちゃいます……。天邪鬼(あまのじゃく)なんですよ。新しくなることに対して逆行していたい。
――服の感覚から古い音楽に目覚めたんですね。
甲田:歌を始めたのも「それまでの自分の音楽だけだと表現したいファッションができない」と感じたからなんです。別にジャズを演奏しながら着たい服を着ることもできるけど、もっと自分のやりたい髪型や服、メイクが映えるステージの見せ方があると気づいたときに「やっぱフロントでしょ」みたいな(笑)。「もっとオシャレしたい、だから歌いたい」って。
――「チャラチャラしてる」という批判もあるかと思うのですが、それに対してはどう応えます?
甲田:それは私の一部分だけを見ている人が言う言葉だと思うんです。難しいけど「人は変わる」としか伝えられる言葉がありません。もちろん音楽も自由ですけど、自分にとっては服が一番自由。音楽はスタッフとも相談しながら進めたり、リスナーのことも考える場面があるけど、ファッションは誰にもダメって言われないので。
何を着てもいいし、売れるとか再生回数も気にしなくていい。何でもいい。縛りようがないし、何でも許してくれるから。それがなかったら、どうなっちゃってたんだろう……(笑)。そこが本当に好きで。「みんな同じ格好しろ」と言われたら歌もやってないかもしれません。すべてが反骨精神。
――なるほど。
甲田:「ジャズだけやれ」と言われたら、絶対やりたくないですもん(笑)。でもジャズへの愛情は1ミリも変わらないんですよ。レジェンドのピアニストであるバリー・ハリスさんにレッスンしてもらった時間は自分の人生において大切な瞬間でした。彼が存命だったら、もう一度教えてもらいたいくらいです。
――そして2ndワンマンライブ「STOP ME」がいよいよ迫っています。今年5月の1stワンマンから早いペースでの開催となりますね。
甲田:「STOP ME」という曲ができたときに「これをワンマンのタイトルにしたい」とひらめいたんです。EPの質感がクールで締まっている感じなので、それをライブにも反映させて無駄がないステージにしたいと思ってます。
「楽しかった」という感想も嬉しいですけど、「何かすごいものを見た」という印象を残すのを目標に、そのためのアレンジや演出を考えているところですね。「2024年は楽しかった」と思って帰ってもらえる楽しい日にできれば。
内容はバンドセットでドラムスが竹村仁、ギターが中松文吾、ベースにマーティ・ホロベックという間違いないメンバーたちが集まってくれました。このためにトラックも大幅に変えたりもしたので、音源と違うサウンドが聴けるはずですよ。音楽的にも間違いないものを提供できると思うので、ぜひ目撃してください。
Profile/甲田まひる(こうだまひる)
ジャズ・ヒップホップをバックボーンとして、ジャンルに束縛されていない自由なサウンドを放つシンガーソングライターで、全楽曲の作曲・作詞を自ら手がけている。2021年11月5日シンガーソングライターとしてデビュー作品となる1st Digital EP『California』をワーナーミュージック・ジャパンより発表。2023年9月13日、自身初となる1stフルアルバム『22 Deluxe Edition』をリリース。2024年1月26日にはTVアニメ「ぶっちぎり?!」のエンディング・テーマ『らぶじゅてーむ』をデジタルリリース。その他にも、俳優、タレント、ファッションアイコンとして多岐にわたる活動を行っている
Instagram:@mahirucoda
X:@mahirucoda
スタイリング:mayuko saito
衣装:ユウショウコバヤシ
衣装:pincue
衣装:CRANK
ヘアメイク:Pink Tanaka
撮影=西村満
スタイリスト:mayuko saito
衣装:ユウショウコバヤシ
衣装:pincue
衣装:CRANK
ヘアメイク:Pink Tanaka
インタビュー&文=小池直也
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この記事を書いた人
音楽家/記者。1987年生まれのゆとり第1世代、山梨出身。明治大学文学部卒で日本近代文学を専攻していた。自らもサックスプレイヤーであることから、音楽を中心としたカルチャー全般の取材に携わる。最も得意とするのはジャズやヒップホップ、R&Bなどのブラックミュージック。00年代のファッション雑誌を愛読していたこともあり、そこに掲載されうる内容の取材はほぼ対応可能です。
Website:https://smartmag.jp/
お問い合わせ:smartofficial@takarajimasha.co.jp
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