「“ラスボスの小林幸子”降臨!」ボカロとも縁の深いが“さちぴ☆”が歌手デビュー60周年を語る
最先端で歌い続けて60年。ポケモン、ボカロ、ニコニコ動画とあらゆるジャンルで名曲を生み続ける、国民的歌手・小林幸子さんがsmartに降臨!歌手デビュー60周年を記念して、スペシャルインタビューをお届け!
言葉で伝える以上のものを、歌と音楽は伝えてくれる
―芸能生活60周年おめでとうございます。僕は『ポケットモンスター』を通して小林さんの歌を知った世代なのですが、多彩な活動をされた60年でしたね。
小林幸子(以下、小林) 先日、テレビ番組にお笑い芸人のみなさんとご一緒した時、収録の合間に霜降り明星のせいやさんが「ひとつだけ言いたいことがあるんですけど、「『ポケモン』の歌を本当に何度も聴きました。歌うと涙が出ちゃうくらい好きなんです」ってお話をしてくださったんです。そうしたら、そこにいたハナコの岡部さんも「僕も好きなんです」と仰ってくれて。ちょうど今お笑い芸人をやっている30代の方々は、私が『ポケモン』の歌を歌っていたころとドンピシャな世代なんです。
――本当に幅広いファンの方々から支持を集めていらっしゃる。
小林 先日、びっくりしたことがあったんです。保育園で先生をしている知り合いが「小林幸子って知ってる?」って子どもたちに聞いたそうなんです。そうしたら「知らない」っていうんです。ところが「『ラスボスの小林幸子』って知ってる?」って言ったら、みんな「知ってる」って言うんですって。それを聞いてね、本当に嬉しかったんです。私が演歌を歌っていることなんて知らない子どもたちが知ってくれていることがありがたいなって思いましたね。
――「ラスボス」。紅白歌合戦での小林さんの迫力あふれる衣装とパフォーマンスをもとにネットミームから名づけられた、あだ名ですね。そんな呼び名も受け入れていらっしゃるんですね。
小林 私は10歳でデビューしまして、そのときは自分の周りにいる人が全員、お兄さんお姉さんなど年上の方ばかりでした。子どもだった私は「チビ」って呼ばれていたんですよ。でも、今でも「チビ」って呼んでくれるのは伊東四朗さんくらい(笑)。そのあと私はだんだん大きくなって、まわりからも「さっちゃん」て呼ばれるようになって。今では「ラスボス」(笑)。さらに最近では「さちぴ☆」と呼ばれるようになりましたからね。好きに呼んでもらっていいんです!
――芸能生活60周年を記念する新曲は「オシャンティ・マイティガール」。しかも、シングルとしては100枚目になるそうですね。
小林 気がついたら100枚目だったんです。何か特別に考えていたわけじゃないんですよ。「オシャンティ・マイティガール」というタイトルも……英語ですよ! いや、オシャンティは日本語か(笑)。造語ですね。オシャレな強い女性っていう意味ですよね。そのオシャレな強い女性の歌の奥に秘めた意味が素晴らしいんです。結局、どんなことがあっても愛なんだよってことを歌っているんです。愛ですよ、愛。ちょっと間違うと志村けんさんの「あいーん」になっちゃいますけど(笑)。
――あはは(笑)。
小林 今の人にとっても昔の人にとっても、やっぱり愛というものは普遍のものですから。そういうテーマを新曲に込めてくださったことが嬉しいですね。ただね、今回ラップも入っているから歌詞の分量が多くてね。いつも歌っている演歌の10倍はありましたから。家の壁に歌詞を貼って、ぐるぐる家の中を回りながら覚えました。でも、すごく面白かった。音楽って音を楽しむって書くじゃないですか。だから、楽しめる音ならいいと思うんですよね。そうやって楽しい音には、言葉以上のものが込められる。きっと、言葉で伝える以上のものを、歌と音楽は伝えてくれるんだと思います。
――小林さんは、ボカロの楽曲を「歌ってみた」などで挑戦されています。そういう経験は今の活動に生かされていますか。
小林 いや、ボカロの曲はね、息継ぎする間がないくらい歌詞があって大変なんですよ。それを歌えないのは悔しいじゃないですか。ボカロが歌えているのに、自分ができないなんて悔しいんですよ。対抗心が出てきちゃってね(笑)。ほんの小さな隙間を見つけて、息を吸ったり、いろいろなテクニックを使って歌いきりましたね。あと「脳漿炸裂バーサン(脳漿炸裂ガールの替え歌)」を歌ったときはもう早いのなんのって。でも、そのときも悔しいから頑張りました。どの曲も本当に楽しいです。
――小林さんは「VOCALOID4 Library Sachiko」にも関わられていますね。
小林 これまで私は本当にいろいろなレコーディングを経験してきたんですけど、このボーカロイドのレコーディングはこれまでのどれとも違うレコーディングなんですよ。歌うわけじゃないんです。ずっと呪文のような言葉じゃないけど、言葉のようなものを、音程の低いところから高いところまで読み上げるような感じで。2日間ずっとレコーディングをしていたんです。そうしたら、歌うときに使う声帯とは違う部分の声帯を使っていたんでしょうね。次の日、声がガラガラになっちゃって。びっくりしましたね。「VOCALOID4 Library Sachiko」をリリースしてからしばらくしたら、私が聴いたことも歌ったこともない曲を、私が歌っているんですよ。たしかに、私の声が歌ってる。「Sachiko」の私の声を使って、多くの人が歌をつくってくれていたんですよね。これってすごいことですよね。私が亡くなったとしても、小林幸子の新曲が作れるってことですからね。ドキドキしましたけど、時代の変化ってこういうものなんだなって思いましたね。
――これからの10年はどんな活動をしていきたいとお考えですか?
小林 新しいことにも挑戦してきたけれど、これをやりたい、あれをやりたいと思っているわけではないんです。今目の前にあるものを一生懸命やっていると次のステップがやってきて、それが新しいことや面白いことに繋がっていく。そんな60年でした。これから先も本気で楽しんで一生懸命やっていきたいと思っています。もし、そんな小林幸子を面白がってくれる方がいたら、一緒に何か面白いことをやりたいですね。
Profile/小林幸子(こばやし・さちこ)
1953年12月5日生まれ、新潟県出身。1964年、10歳でデビュー。1979年「おもいで酒」が200万枚突破のヒットとなり、日本レコード大賞最優秀歌唱賞など数々の音楽賞を受賞。NHK「紅白歌合戦」に34回出場など輝かしい実績を持つ。
INFORMATION
60周年記念曲「オシャンティ・マイティガール」
小林幸子の芸能生活60周年記念曲であり、100枚目のシングル。こぶしの効いた演歌的な歌いまわしやラップなどさまざまな要素を一曲に詰め込んだSuch a Nice Girlにぴったりなパワフルなポップ。
Photography_SATOSHI OMURA
Interview & Text_HIDEKUNI SHIDA
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