【映画『バービー』グレタ・ガーウィグ監督×山谷花純対談】すべての女性を勇気づける映画ができるまで
執筆者: ライター・エディター/佐藤玲美
今日8月11日(金)に公開となった映画『バービー』。2023年における全米オープニング興行収入NO.1を記録し、累計10億ドルを突破するなど、この夏NO.1ヒット映画といえる作品です。今作は、世界でいちばん有名なファッションドール“バービー”の世界を初めて実写映画化したもの。そのプロモーションのために初来日したグレタ・ガーウィグ監督が、女優・山谷花純さんの映画連載『ALL IS TRUE』に登場! グレタ監督は、『バービー』の脚本や製作総指揮も手掛けており、女優としても高い評価を得ている人物です。今回は山谷花純さんがインタビュアーとして、作品『バービー』についてはもちろん、グレタ監督の人物像にも迫ります!
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今年の夏、全世界が注目する映画!
全ての女の子を勇気づける
“バービーピンク”が世界を席巻!
山谷花純(以下、山谷) 現在、映画『バービー』は全米で公開され、日本でも8月11日から公開になります。ご自身が手掛けた作品が完成し、世に送り出す今の心境について教えてください。
グレタ・ガーウィグ(以下・グレタ) 本当に心から嬉しいし、感謝の気持ちでいっぱいです。元々、私はとにかく映画が大好き。そして映画館でたくさんの方たちと作品を観るという体験も大好きなので、実際にそれが自分たちで作った『バービー』という作品でできることがとても嬉しいです。アメリカでは“バービーピンク”にちなんで、たくさんの方がピンクを取り入れた着こなしで映画館に訪れたりしてくれているんです。『バービー』の魅力を映画という形で沢山の人に伝えたいという思いが叶って、本当に嬉しいです。
山谷 今作に関して、グレタさんは監督だけでなく脚本も手がけられています。オリジナルのストーリー作りから登場人物のセリフまで、どのような思いを込めて取り組まれていたのでしょうか?
グレタ 自分自身が幼い頃にバービーで人形遊びをしていたという経験はもちろんあるんですが、それに加え、大人になってからも子供の頃に人形と遊んでいた自分を思い出すことがあるんです。なので、子供の頃に遊んでいた自分と、大人になってから当時を振り返っている自分という、その両方の視点を持つことから今回の作品作りはスタートしました。あとは、私はバービーが大好きだったのですが、母は嫌いだったんです。そのことも印象に残っていたので、そこにも何かストーリーがあるのではないかと掘り下げていきました。
山谷 バービーの世界には“ピンク”は欠かせないカラーということで、今日は衣装もピンクでバービーちゃんを意識してきました! 私自身“日本版パワーレンジャー”である『手裏剣戦隊ニンニンジャー』という作品でピンクを担当していたことがあって、私の大切な色のひとつです。グレタさんにとって“ピンク”はどんなイメージですか?
グレタ 幸せや遊び心を感じさせてくれる色です。見るだけで人を笑顔にしてくれる色でもありますよね。今回は作品でもピンクだらけの現場があったのですが、みんなセットに足を踏み入れるとパッと表情が明るくなって笑顔になっていました。
山谷 私が思うピンクって女の子が強くなれる色で、そっと背中を押してくれる色だなと思うんです。なので、『バービー』という作品はピンク色がキーカラーになっていることからも、全ての女の子に勇気を与えてくれる作品だなと思いました。
グレタ まさにそう思ってもらえるような作品にしたかったのでとても嬉しいです。エンパワーメント(自信をつける)すると同時に、笑ったり、時には踊り出したくなるような作品を作りたいと思っていたんです。
グレタ監督が次に作りたいのは
完全なミュージカル映画
(山谷花純衣装クレジット)ジャケット/AKIKO OGAWA(BRAND NEWS ☎03-3797-3673)、シューズ/ジェフリーキャンベル(ジェフリーキャンベル ラフォーレ原宿店 ☎03-6434-0335)、ピアス・リング・ブレスレット・ネックレス/以上すべてアビステ(アビステ ☎03-3401-7124)、トップス・スカート/ともにスタイリスト私物
山谷 グレタさんは映画が好きとおっしゃっていましたが、普段邦画を楽しむことはありますか?
グレタ 邦画も大好きでたくさん観ています。なので、今回は初めての来日なのですが、作品で観た日本の情景のフィルターを通して、日本を観ている感覚です。日本だけでなく、パリを舞台にした映画を観たあとでパリに初めて行ったときも同じような感覚になりました。
山谷 そうなんですね。私はグレタさんが監督を務められた『レディ・バード』(2017年)という作品が大好きなんです。今回の『バービー』もそうですが、ご自身が監督された作品は、キャストとして出演されない印象があります。それはグレタさんのマイルールなのでしょうか?
グレタ 自分が監督をする作品で自分が役者として出演することは今後もないと思います。監督と役者では、脳の違う部分を使う気がしていて。一つの作品でカメラの前と後ろに同時にいることはたぶん無理なんじゃないかと思うんです。おかしくなっちゃうかもしれない(笑)。なので、監督と役者を同時にできる方はすごいなといつも思っています。監督をしているときの私の喜びの一つが役者の演技を見ること。自分が演者としてでてしまうと、その喜びがなくなってしまうんですよね。
山谷 監督として今後、どんな作品を作りたいですか?
グレタ 作りたい映画を夢見ることは本当に楽しいことです。多くの“やってみたいリスト”がある中で、今、考えているのは完全なミュージカル映画。今回もそういったシーンが入っているんですが、よりミュージカルな作品を作りたいし、セリフのないダンスだけの映画を作ってみたいと思っています。
山谷 いつか、ぜひ観てみたい! 楽しみにしています。
映画館は、日常とは違う世界に
誘ってくれるステキな場所
山谷 役者としてやってみたいことはありますか? もしくは、役者としてやりたいことを全部やり終えたと感じて、監督業に専念するというお気持ちなのでしょうか?
グレタ 演技は大好きなので、この監督のもとで演じたいという監督はたくさんいます。例えば、ポール・トーマス・アンダーソン監督やマーティン・スコセッシ監督など私自身が敬意を感じている偉大なる映画監督たちがたくさんいます。元々、役者として作品に参加する時は、その監督の世界観に足を踏み入れることにワクワクするんです。そして、自分も監督を手掛けるようになった今、自分が役者として参加することで、尊敬する監督たちの仕事ぶりが見られるという喜びもあるんです。
山谷 今の言葉を聞いて胸が熱くなりました。私も女優としてお芝居に触れていて、人との出会いって楽しいなって思いますし、物語の世界観の中に入る作業もすごく大好きです。ちなみになのですが……。監督として、日本人の役者をご自身の映画に起用するといった考えはあったりするのでしょうか?
グレタ もちろんです! 実現できたら素晴らしいことだと思います。私が映画を好きな理由は、自分とは違う世界に足を踏み入れられることなんです。そういった意味でグローバルな映画は魅力的。映画館で映画を観る時は日常とは違う世界に誘(いざな)ってくれるものなんです。ぜひ、日本の役者とも仕事をしてみたいです。
山谷 私にもチャンスはありますか?
グレタ もちろん。ぜひご一緒したいです!
山谷 では、今から英語の勉強を始めます!(笑)
グレタ 私が日本語を勉強するっていうのもアリですよね?(笑)
山谷 では、英語と日本語のセリフを半々にして(笑)。そして、これからたくさんの方が『バービー』を観に映画館に足を運ぶと思いますが、作品をどのように楽しんでほしいですか? また作品から感じてほしいことなどがあったら教えてください。
グレタ 笑って泣いて、踊っていただきたいですね。またそれ以上に、“今の自分はありのままで十分に満ち足りているんだ”ということを、それぞれの方に感じていただきたい。『(バービーのような)完璧なんかないし、目指すべきゴールがなくても、今の自分で十分なんだ』と思っていただけたら嬉しいです。
山谷 最後に一つお伺いしたいのですが、グレタさん自身は“ケン(バービーのボーイフレンド)”のような男性は好きですか?
グレタ 私がケンを? ありえない(笑)。可能性があるとしたらアランですね(笑)。
山谷 私もです!(笑)。今日はお話できてうれしかったです。ありがとうございました!
(了)
『バービー』
8月11日(金)全国ロードショー
あらすじ
どんな自分にでもなれる完璧で<夢>のような毎日が続く“バービーランド”で暮らすバービーとボーイフレンド(?)のケン。ある日突然身体に異変を感じたバービーは、原因を探るためケンと共に〈悩みのつきない〉人間の世界へ!そこでの出会いを通して気づいた、“完璧”より大切なものとは?そして、バービーの最後の選択とは――?
キャスト:マーゴット・ロビー、ライアン・ゴズリング、シム・リウ、デュア・リパ、ヘレン・ミレン他
監督・脚本:グレタ・ガーウィグ
脚本:ノア・バームバック
プロデューサー:デイビッド・ヘイマン
配給:ワーナー・ブラザース映画
©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
公式サイト:barbie-movie.jp
公式Twitter:@BarbieMovie_jp
公式Instagram:@barbiemovie_jp
Profile/グレタ・カーヴィグ
米アカデミー賞ノミネート経験をもつ監督であり脚本家でもある。ハリウッドで最も影響力のある言葉を発する人物の一人。ノア・バームバックとともに本作の脚本を書き、以前の監督作に『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019)がある。シアーシャ・ローナン、ティモシー・シャラメ、フローレンス・ピューが出演したこの作品は、米アカデミー賞6部門、英アカデミー(BAFTA)賞5部門、全米製作者組合(PGA)賞、全米脚本家組合(WGA)賞にノミネートされた。監督デビュー作『レディ・バード』(2017)は、自身の最優秀監督賞と最優秀オリジナル脚本賞を含め、米アカデミー賞5部門にノミネートされた。また、多くの作品に出演する俳優でもある。ノア・バームバックと脚本を書き、出演もした『フランシス・ハ』(2012)の演技で、ゴールデングローブ賞にノミネートされた。2022年、バームバックが監督した最新作『ホワイト・ノイズ』に出演し、アダム・ドライバーと共演。そのほか、俳優としての出演作品には、『ダムゼル・イン・ディストレス バイオレットの青春セラピー』(2011・未)、『29歳からの恋とセックス』(2012・未)、『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』(2015)、『ミストレス・アメリカ』(2015・未)、『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』『20センチュリー・ウーマン』(ともに2016)などがある。
Profile/山谷花純(やまや・かすみ)
1996年12月26日生まれ。宮城県出身。みやぎ絆大使。2007年、エイベックス主催のオーディションに合格し、翌年ドラマ『CHANGE』でデビュー。18年、映画『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』で末期がん患者役に丸刈りで臨み注目される。また、主演映画『フェイクプラスティックプラネット』がマドリード国際映画祭2019最優秀外国語映画主演女優賞を受賞した。22年放送のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では比企能員の娘・せつ役を好演し、今後が期待される女優。主な出演作は、映画『告白』『寄生獣』『耳を腐らせるほどの愛』『人間失格 太宰治と3人の女たち』『天間壮の三姉妹』、ドラマ『あまちゃん』『ファーストクラス』『私の正しいお兄ちゃん』『liar』、舞台シェイクスピアシリーズ『ヘンリー八世』『終わりよければすべてよし』など。23年春の朝ドラNHK連続テレビ小説『らんまん』では主人公の万太郎の住む十徳長屋の住人で小料理屋の女中、宇佐美ゆうを演じている。朝ドラは『おひさま』『あまちゃん以来、3度目の出演。
山谷花純公式インスタグラム:@kasuminwoooow
山谷花純公式ツイッター:@minmin12344
写真=斎藤大嗣
スタイリング=高橋美咲(Sadalsuud)
ヘアメイク=永田しおり
インタビュー&文=佐藤玲美
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この記事を書いた人
東京在住のライター・エディター。『smart』『sweet』『steady.』『InRed』など、ウィメンズ、メンズを問わず様々なファッション誌やファッション関連のwebでライター&編集者として活動中。写真集やスタイルブック、料理本、恋愛心理、インテリア関連、メンタル&ヘルスケアなどの本の編集にも携わる。独身。ネコ好き。得意ジャンルはファッション、ビューティー、インテリア、サブカル、音楽、ペット、料理、お酒、カフェ、旅、暮らし、雑貨など。
Instagram:@remisatoh
Website:https://smartmag.jp/
お問い合わせ:smartofficial@takarajimasha.co.jp
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