「絶対面白くなる」恋愛リアリティ番組の常識を覆したNetflix『あいの里』プロデューサーに聞いた、“35歳以上”の恋愛番組に込めた想い
執筆者: ライター/石野志帆
Netflixリアリティシリーズ「あいの里」独占配信中
Netflixで独占配信中の『あいの里(さと)』は、男女が人里離れた古民家で共同生活を送りながら恋を育む様子を追った恋愛リアリティ番組。参加者は全員“35歳以上”で、中には60代もいるという異色さだが「泣ける」「恋だけではなく、愛とは何かが知れる」などと話題沸騰し、Netflix日本でも連日トップ10入りを果たした。プロデュース・演出を手掛けたのは、フジテレビ在籍中から『あいのり』の企画制作に携わった合同会社キャンドル代表の西山仁紫(ひとし)さん。ミドルエイジ以上の恋愛リアリティ番組をヒットさせた狙いと、企画に込めた想いを聞いた。
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「閉鎖空間にいると恋愛は加速」
『あいのり』制作当時から変わらない
恋愛観察番組の“鉄則”
Netflix『あいの里』プロデューサー 西山仁紫さん
――フジテレビ『あいのり』シリーズの企画制作をずっと担当されてきた西山さんですが、今回のNetflix『あいの里』は人里離れた古民家での恋愛観察バラエティでした。『あいのり』のラブワゴンとは大きく異なりますね。
西山仁紫(以下、西山) もともと「閉鎖空間を作りたい」っていう大前提があるので、海外でラブワゴンに乗っているのと山奥の古民家っていうのは、僕の中では実は基本的にあんまり変わっていないんです。これは僕自身の「複数の男女に閉鎖空間へ入ってもらって観察すると、恋愛がものすごく加速する」っていう経験が大きくて。学生時代に参加した英語の短期留学で住んだドミトリーに10人ずつぐらいの男女がいたんですが、1カ月で半分ぐらいがカップルになっちゃった。僕も2カ月目に4歳年上の黒髪の日本人とくっついちゃって、英語は全然うまくならなかったですが(笑)。
――留学あるあるですね(笑)。閉鎖空間に閉じ込められると恋愛が加速するのは何故だとお考えですか。
西山 閉鎖空間にいると、1週間ぐらいで話のネタも尽きて喋ることがなくなるんです。そうすると、自己開示するしかない。自己開示をすると、今までなかなか言えなかった深い話になってくるんですよ。「両親が離婚した」「養護施設で育った」とか、「元カノが交通事故で死んじゃって……」のような。こうした話は、友達関係から恋愛に行くまでには絶対必要なことだと思っていて。深い話をされると「自分だけにそんな大事な話をしてくれた」ってすごく嬉しくなるし、したほうはしたほうで「自分の話を聞いてくれたんだ」と思うじゃないですか。だからそこで急速に仲が良くなって恋愛が加速していくと思うんです。
――そうした閉鎖空間をつくるのにどんな工夫をしているんでしょうか。
西山 『あいのり』のときからずっと、普段の恋愛ツールとなるようなものは全部禁止しています。普通恋愛をするために必要なもの、つまり携帯電話であったり、あるいはちょっと美味しいレストランだったりプレゼントだったり。そうやってできるだけ外部との接触を絶つことができる環境を作ることで、生身で勝負するしかなくなるんですよね。結果、結びつきが深くなるっていう仕掛けは、ラブワゴンが古民家に変わっただけで、閉鎖空間で恋愛を観察するということは変わってないです。
60代も参加!
「大人の恋は絶対に面白くなる」と確信したワケ
Netflixリアリティシリーズ「あいの里」独占配信中
――『あいの里』に参加する住人は35歳以上で、60代もいました。参加者の年齢層が他の恋愛リアリティ番組とは異なるのは大きなインパクトがありました。
西山 Netflixさんの方から「大人の恋を扱うリアリティ番組っていうのはどうか」と相談を受けたんですが、僕は「絶対面白くなりますよ!」って即答しました。というのも、『あいのり』をやった経験からも言えるんですが、大人の方が人生経験がバラバラだからこそ、それぞれの経験にスポットライトを当てることができると思ったんです。大人の恋愛って一様ではないじゃないですか。今まですごくうまくやってきた人と、こじらせているような人とでは、恋愛観が全然違うし、一人一人の目的も違って、バリエーションが豊かになる。『あいのり』では撮れなかったものがたくさん撮れるはずだ、という読みは最初からありました。
Netflixリアリティシリーズ「あいの里」独占配信中
――一番下の年齢を“35歳”とした のはなぜでしたか。
西山 30後半という年齢は、特に女性は出産などいろいろなことがあり、人生最後の愛を本当に真剣に考える時期ですよね。その辺は、30代前半が参加者の一番上の年齢だった『あいのり』では撮れていなかったですし、僕らも30代後半の恋愛を撮ったことがなかった。今まで撮れなかったものがたくさん撮れるなと、いうことで35歳以上の年齢設定で始めました。
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この記事を書いた人
TV局ディレクターや心理カウンセラーを経て、心を動かす発見を伝えるライター。趣味はリアリティーショー鑑賞や食べ歩き。海外在住経験から、はじめて食べる異国料理を口にすることが喜び。ソロ活好きが高じて、居合わせた人たちの雑談から社会のトレンドをキャッチしている。
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お問い合わせ:smartofficial@takarajimasha.co.jp
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