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永山瑛太が映画『怪物』で得た“俳優人生で初”の感覚。「自分に対する反省が一つもない作品は初めてかもしれない」

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永山瑛太が映画『怪物』で得た“俳優人生で初”の感覚。「自分に対する反省が一つもない作品は初めてかもしれない」

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俳優として活躍する永山瑛太さんが、久々にsmart本誌にカムバック。2000年代初頭には何度も表紙を飾ってくれた、いわばsmart読者の兄貴的存在。出演作の映画『怪物』について、また自身の変化について、彼が語ったこととは――。

この記事は2023年smart7月号に掲載した記事を再編集したもので、記載した情報もその時点のものです。

自分に対する反省が
一つもない作品は
初めてかもしれない

永山瑛太が映画『怪物』で得た“俳優人生で初”の感覚。「自分に対する反省が一つもない作品は初めてかもしれない」

是枝さんの世界の中でどう生きるのか考えた

「smartは以前、ファッションページや表紙でもお世話になっていました。2000年代初頭のsmartといえば、大柴裕介さんやKEEさん(現・渋川清彦)、RIHITOさんを筆頭にストリートのカリスマたちがたくさん出てましたよね。みなさん芯の強い思想を持った不良って感じで、おしゃれで独創的で、アーティスト感も強くてカッコよかった」

 1999年にモデルデビューし、本誌に何度も登場してくれていた永山瑛太さん。2001年からは俳優として活躍し続けている。そんな永山さんの最新作は、初タッグを組む是枝裕和監督作『怪物』。

「是枝さんの作品は、自分が俳優をやる前から観てきました。自分がこれまで観てきた日本映画と違っていたし、こういう映画があるんだ、新しいものが生まれてきているんだなって思いながら、是枝
さんの作品を観続ける中、俳優を続けてきて今回ご縁をいただいてすごく嬉しかったです。自分に何ができるのか、是枝さんの世界の中で僕はどう生きるのかって、そういうことをまず考えました」

 大きな湖のある郊外の町を舞台に、よくある子ども同士のケンカだと思われたことが次第に社会やメディアを巻き込み大ごとになっていく様を描く人間ドラマである本作。大きな渦に巻き込まれていく学校の教師を演じる。

「一番最初に脚本を読んだとき、タイトルが『怪物』なので、まず一体誰が怪物なんだろうって考えましたね。次に自分が演じる保利先生の中で何が起こっているんだろうって、そこだけに注目して読みました。保利がどういう気持ちで生きているのか。本人は明るく真面目に先生としてまっとうしようとしているのに落とし穴がたくさんあるんです」

 脚本を手がけるのは、『花束みたいな恋をした』などで絶大な支持を集める脚本家の坂元裕二。永山さんとは、ドラマ「それでも、生きてゆく」や「最高の離婚」などでタッグを組んでいる。

「台本を読んで、保利先生が罠なのか運命なのかわからないけど、窮地に追いやられていく過程で、僕がキャスティングされたことが腑に落ちました。これまで坂元さんの作品の中で生きているのが辛いと思うほど、追い詰められる役を演じることが多かったので、今回もか、と(笑)。きっと僕を追い込みたいんでしょうね(笑)。坂元さんは坂元さん自身を、僕に当てて書いていると思うことがあります。実際はわからないけど、『それでも、生きてゆく』では“お前が一番苦しめ、お前にこの苦しみがわかるのか”って、坂元さんにその苦しさ、生きづらさを表現してくれって言われているような感覚でした。でも僕はドラマや映画の物語の中で生きることによって、苦しみや悲しみを抱えることは大変さだけではな
く、どこか楽しみながら演っています。僕にとって虚構の中で生きるほうが合っていて、だから俳優になったんだなって再確認しています」

是枝さんの作品では承認欲求が排除されていく

 是枝監督と『怪物』という作品との出会いは、俳優・永山瑛太の中に大きな変化をもたらしたという。

「是枝さんと出会って、自分を見てほしいという承認欲求がなくなる感覚がありました。人に何かを伝えるために俳優としてあれこれ試行錯誤して頭を抱えながらやっていた時期もあるけど、是枝さんといると別に何もしなくていいやって思うんですよね(笑)。保利先生を演じる際こうしてくださいっていう話はなく、あなたはあなたのままでそこにいてくださいっていうこと、一緒に作っていきましょう、っていう是枝さんの気持ちを感じました。その場にそのまま立っていればよくて、それをどう切り取ってもらえるのか。俳優はそれでいいんじゃないかって、僕自身思い始めた時期で、このタイミングでご一緒できたのはご縁だと思うし、貴重な時間を過ごさせてもらいました。僕にとって変わらなきゃいけないこと、変わらなくていいって思うこと。その両方を感じられたことも大きいです」

 また、この作品では俳優人生で初めての感覚も味わったという。

「出来上がった作品を観たとき、自分に対する反省が一つもなかったんです。ただその場所で是枝さんや共演者の方々と一緒に映画を作って、その空間に僕がいたというだけ。反省しないのは初めてかもしれない。それぐらい映画が素晴らしかったです」

自分の役者人生は何なのか見つめ直したい

永山瑛太が映画『怪物』で得た“俳優人生で初”の感覚。「自分に対する反省が一つもない作品は初めてかもしれない」

近年、映画監督やフォトグラファーなどさまざまな顔を持っている永山さん。絵も描き始め、その作品がSNSで話題になることも。永山さんが、今興味を持っていること、今後やっていきたいことは?

「去年、今年ぐらいからwowowのアクターズショートフィルムで役所広司さんを撮らせていただいたり、写真集や写真展もやらせてもらったんですけど、今後は俳優の仕事に集中して、自分の役者人生は何なのかってもう一度見つめ直したい気持ちがあります。そのために一番いいのは、現場に居続けること。でも、なんでもかんでもやるわけではなく、自分自身がどこに向かっていくのか、どこに進んでいきたいのかを焦らずに考えていきたいですね。豊かな人たちに囲まれて、仕事をしたいです」

 その思いは、日本映画界、エンターテインメントに対する愛情からだ。

「僕は20歳くらいから、この仕事をしてきて、楽しかった思い出がたくさんあります。良いものを作ろうっていう勢いでみんなで一緒に頑張って、おいしいものを食べて、お酒を飲んでディスカッションして。でも、今は誰もが慎重になっていて、そういう雰囲気があまりないんですよね。スクリーンに映る演者に勢いがないと、見たことがあるものしか生まれてこない気がしますし、今のままでは日本映画は衰退してしまうのではないか、と。自分に何ができるのか、自分が何をしたら変わるのか、改めて考えたいです。ここからが第一歩ですね」

 最後に永山さんから読者へメッセージを。

「好きなことをやるなら、周りの目を気にせず、パンク魂でやってほしいですね。何かと生きづらい世の中だけど、ぶっ壊してやるっていう気持ちで行動すると何か開けてくる気がします。僕も頑張ります(笑)」

Information
奇跡のコラボレーションが
実現したヒューマンドラマ

永山瑛太が映画『怪物』で得た“俳優人生で初”の感覚。「自分に対する反省が一つもない作品は初めてかもしれない」

©2023「怪物」製作委員会

映画『怪物』絶賛全国公開中!

大きな湖のある郊外の町で、ある日、子供同士のケンカが起こる。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、子供たちの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そして嵐の朝、子供たちは姿を消した。『万引き家族』でカンヌ国際映画祭最高賞パルム・ドールに輝いた是枝裕和監督が、「今一番リスペクトしている」と語る脚本家の坂元裕二と初タッグ。音楽は、『ラストエンペラー』など、海外でも第一線で活躍した坂本龍一が手がけた。共演は安藤サクラ、田中裕子、映画初出演の黒川想矢、柊木陽太ら。

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Profile/永山瑛太(ながやま·えいた)
1982年生まれ、東京都出身。1999年モデルとして活動を開始。2001年に俳優デビューし、映画、ドラマなどを中心に活躍。4月クールのドラマ「あなたがしてくれなくても」に出演中。近年はフォトグラファーや映画監督としても活動。

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  • 是枝裕和監督が脚本家の坂元裕二と初タッグを組んだ映画『怪物』で、永山瑛太は学校教師役を演じている。

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