【ドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』で話題】田辺桃子の挑戦「“ドラマで描かれてない部分”をどれだけ出せるか」
執筆者: クリエイティブ集団/画画画
毎回様々なジャンルで活躍するゲストをモデルに迎え、大判カメラで10枚(ONE ROLL)の写真を撮影し、その写真からストーリーを紡いでいく連載「4×5(シノゴ)」。「4×5」とは、大判カメラで使用されるシートフィルムのサイズが由来です。第4回のゲストは、個性的な役を演じさせたら若手随一のカメレオン女優・田辺桃子さん。ティーンモデルから女優へとステップアップしてきた次世代のニューカマーにファッションシュート&インタビューで迫った
後編のメインテーマは、“演じること”について。
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“本読み”がある場合はある程度
自分の中の一つの”答え”を持っていく
――『リコカツ』ぐらいからすごく個が立ったキャラクターの役が増えてきた印象です。そこから『夕暮れに、手をつなぐ』につながると思うのですが、また今までとちょっと違った、個性の強い役柄でしたよね。
田辺桃子(以下、田辺) 個性が強かったですね(笑)。台本を読んでいて、この言葉は文章で読んだらめちゃくちゃ強いけど、それを私がやるっていうことに意味合いが生まれるじゃないですか。別に私じゃなくても良かったかもしれないし、他の俳優でも良かったかもしれない。ただ、だからこそ私がこの言葉を言うことになったことの意味合いをもっと持たせようって思ったんです。
『夕暮れに、手をつなぐ』の(菅野)セイラという役は一見理解されにくい面も多かったですが、作中で一番人間臭かったなと思っていて。人間味が出たほうが私も観ていて楽しいし、台詞とかも言いようによってはありふれたキャラクターになりかねなかったと思うんですよ。“モブキャラ”(※)じゃないけど、主人公の恋を応援するための引き立て役みたいに感じられるのは絶対に違う!と思っていたんです。あの子にもあの子の人生があって、ここに至るまでの色んな経験があって今ここにいるっていう、このドラマで描かれてない部分をどれだけ見せれるかでそのキャラクターの人間らしさが出て、その人間らしさが出るから観ていて面白いって、自分としては思うんです。普段から映画とかでも、お芝居のそういう部分を観ていて。“ドラマで描かれてない部分”をどれだけ出せるかが、『夕暮れに、手をつなぐ』での私の挑戦だったなと思います。
※モブキャラ……アニメーションやマンガの背景にいる、主人公以外のその他大勢の群衆のこと。
――なるほど。本作では描かれない部分をどれだけ見せるかっていう部分をもう少し掘り下げたいのですが、具体的にどういうことですか?
田辺 分かりやすいものは少ないです。例えば監督さんとかカメラマンさんとかが気づいて拾ってくれたらいいなっていうぐらいの感じでいるんですけど、例えば歩き方でいうと、道があってどこを通るかって、人それぞれじゃないですか?道の真ん中を堂々と歩いているのか、道の端の石と地面の間を乗ったり降りたりしながら歩くか、とか。
――あぁ、なるほど。そういう部分ですね。
田辺 シリアスなシーンで描かれているとこだけだと、ちょっと軽くなったりとかするんですけど。例えば、学生時代にお母さんとか親を含めた大人とうまくいかなくて、大人になっても会社でうまくいかないとか、その場面だけで見たら、そういう過去があったっていう風に思うだけじゃないですか。そこで、ちょっと目に力が入れたりとか、喋っていて怖くなった時に、より過敏になったりとか。そういう描かれない過去があるってすごく大事で、そういうことがあったっていうのを意識するだけで自分が予想していなかった表情筋の動きとかをするんです。
私はあまりカメラチェックとかをしないので、完成形を見てびっくりすることとかもあるんですけど、意外と無意識に、予想してなかった動きやコントロールしてない部分の動きとかが出てきたりとかするんですよね。
――いまやカメレオン的に色々な役をされる田辺さんですが、作品に入る時の役作りは、もうある程度「自分の中でこうだ」みたいなものを監督さんとか、色々な人に聞きながら作り込んでいくんですか?
田辺 撮影が入る前に役者が揃って、私服の状態で円になって座って台本を読んでいくっていう“本読み”っていうのがあるんですけど、“本読み”がある場合はある程度、自分の中の一つの”答え”を持っていくようにはしています。“本読み”がある時とない時があるので、ない場合も撮影に入る時に自分の中で一つの意見、答えを持って現場に行くようにはしています。でも監督とかと話していて、「ここはもっとこうしたほうがこう見えると思う」とか、意見交換をしながら役を作っていく部分はあります。さっき撮影中に音楽の話になったんですけど、自分と役柄で共通点を必ず探すんですよ。自分でプレイリストみたいなものを作る時があって、「この子だったらこの子のテーマ曲はこれ」みたいな感じで作るようにしていて。その子自身のイメージだったりとか、その子が聴いてたらいいなって思う曲とかをプレイリストにして作って、そこからまた発想をもらったりとかは結構しています。
――いいことを聞きました。最後に、すごく素朴な質問で終わりたいんですが、僕自身も色々な役者さんの知り合いがいて、よく皆さん台本を持ち歩いているんですけど、台本はどうやって覚えているんですか?(笑)
田辺 私もこういうことを言っちゃダメなんですけど、台本を覚えるのが苦手で。共演した先輩とか同世代の役者さんが、ほぼほぼ台本を丸暗記してますとか聞くと、「自分もまだまだやな」って、いつも少し喝を入れられた気分になるんです。私はその場面を想像できるかどうかで覚えやすいか覚えにくいかが分かれる気がしています。小説とかも言葉に読みながら、頭で想像するじゃないですか。「登場人物はこういう部屋に住んでいるのかな」とか「“窓から光が差し込む”とあるけど、あそこに窓があって差し込んでるのかな」とか、小説と同じように、台本を読んだ時にまだ見たことがない、セットとか場所だったりを勝手に自分の中でイメージします。「あそこから人が入ってくるのかな」とか「あそこでその人は喋ってんのかな」とかを想像すると、わりとすっと台詞が入ってきやすかったりはします。あとは言葉って、語尾が書き言葉なのか、話し言葉なのかでも全然印象が違いますよね。でも、わりと台本って書き言葉になっちゃってるのが多かったりして。
――それは自分の言い方に変えたりもするんですか?
田辺 変えていい人もいるし、ダメな人もいるけど、キャラクターの口癖とかを私自身が聞いて、これはこっちのほうがナチュラルだなとか自然だなとか思ったら監督とかに提案はしてみます。そうやって台本から自分のものにして、キャラクターのものにしていくのが結構好きです。
――よく覚えられるなぁと単純に思います。ただそれが仕事か(笑)。
田辺 さすがに、そんなに一辺には覚えられないです。その場面ごとだけど、ストーリーを追っていくごとに、例えば1話目で事件が起きて、その事件が頭の中に残ってるから、次の話でこの台詞があるんだなとか。結構話がつながっていくから、感情もつながっていくと、今ここでこれを言いたいなって思ったことが、そのまま台詞になったりとかすると結構ありがたいというか。これが言いたかったんだみたいな。
――なるほど。またこれが医療系とか法律系の物語になってくると、またすごく難しいんでしょうね。専門的用語がたくさん入ってくると。
田辺 皆さんあんなにドラマでスラスラ言ってるので、たぶん相当勉強されてたりとかはすると思います。私はまだやったことないんですが。
――今後こういう役をやりたいとかはありますか?
田辺 個人的には、観てる人とか作り手側が、「”田辺桃子”にはこういうイメージがないからこれをやってほしい」というリクエストのほうが好きなので、絶対に合わないだろうものを、この人でやってみたいという考え方で役をもらえたら嬉しいなっていうのもあるし、アクションとかもやったことがないので、機会があればやってみたいです。
――今までないんですか?アクションとかやってそうなイメージがあります。
田辺 やっていそうですか?“喧嘩っ早い”みたいな?(笑)
――違う違う(笑)。普段VANSとかを履いてるから、身のこなしが軽やかにすぐ何か蹴りが飛んできそうな感じはあるんですけど(笑)。
田辺 でもそれで言うと、キャラクターでメンズっぽい役をやったことがないから、そういうのをやってみたいかも。蹴りは飛んでいくか分からないけど(笑)。
――長い足が鞭のように首元までしなって飛んでくる。そんな役にも期待しています。イメージすることは普段クリエイティブをする中でも、日常的にやっていることなので、役者さんも一緒なことが分かって勉強になりました。本日はありがとうございました!
オールインワン¥50,600/セモー(ビューロー ウエヤマ☎03-6451-0705)、イヤリング¥13,200/アルカナム(ジョワイユ☎03-4361-4464)、その他/スタイリスト私物
Profile/田辺桃子( たなべ・ももこ )
1999年8月21日生まれ、神奈川県出身。ドラマ・映画・CMと多方面に活躍し、映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(2018年/大根仁監督作)、テレビドラマ『ゆるキャン△』シリーズ(2020年〜)、『リコカツ』(2021年)、『夕暮れに、手をつなぐ』(2023年)などに出演。現在はMBS『スイートモラトリアム』に出演中。また、NTV『こっち向いてよ向井くん』(第1話)、金曜ドラマDEEP『癒やしのお隣さんには秘密がある』への出演が決定している。
田辺桃子Instagram:@momoko__tanabe
連載「4×5」とは?
フォトグラファー、スタイリスト、ヘアメイク、動画クリエイターなどの多彩なクリエイターを起用し、クリエイションと総合演出を行っているGAGAGAプレゼンツの連載企画。大判カメラで撮影した10枚の写真とインタビューでゲストの魅力に迫ります。
photographer=斎藤 大嗣
stylist=青木紀一郎
Hair & Make-up=速水昭仁
videographer / filmmaker / director =Mo-chang-co
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この記事を書いた人
2022年に始動した、オルタナ育ちのエキセントリッククリエイティブ集団。「ガガガ」と読む。合言葉は「ヴィジュアルショック フロム ウォーターヒップ」!スチール撮影、動画撮影などのディレクションから、シューティング、スタイリング、ヘアメイク、キャスティング、デザインまでトータルでプロデュースする。STANFORD所属。
Instagram:@gagaga_tokyo
Website:https://www.stanford-group.com/creator/creator-38261/
お問い合わせ:smartofficial@takarajimasha.co.jp
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