「昼休みに会社を作りました」メキシコ、スイスを経てベトナムへ…建築家・大澤晃佑が語る“変化する社会”と向き合う生き方

執筆者: エディター・ライター/相馬香織

ベトナムを目指したのは今こそ「社会の変化を感じられる」国だから

建築家・大澤晃佑が手がける「Fu Hoo Cafe」

――スイスからベトナムを目指したきっかけはなんですか?

大澤:メキシコで働いていたときに北米を旅したりもしたので、中南米、北米、そしてヨーロッパの建築を学んできましたが、よく考えるとアジアのことは全然知らないことに気づきました。スイスで働いていた頃にさまざまなアジア人の友人ができ、ベトナム人の友人から「今、ベトナムは経済成長の真っ只中で、第二の中国と言われている」ということを教えてもらいました。それをきっかけにいろいろ調べてみると、昔の建築と今の建築がリンクされている部分があったり、とても面白そうなところだと思ったのです。

僕が大学生の頃は、まさに中国が経済発展を遂げている最中。そのため中国の現代アートの授業を選択し、有名なアーティストが輩出されたり、社会における建築の役割が変化していることを知ったのですが、当時は中国に行く機会がなく、とても惜しいことをしたと思っていました。スイスにいた頃は中国にはもうその勢いがなくなってきていたので、「今ベトナムに行ったら、これから有名になるアーティストを知れたり、変化していく社会を体感することができるのではないか」と考えました。

建築の仕事をしていると、社会の変化や有り様を直接見ることはとても重要なことですし、そのときにしか見ることができないものなので、個人的にも好きなんです。そのことをスイスにいたポルトガル人の友人に話したところ、「ジュネーブ、ハノイ、ホーチミン、シンガポールにオフィスを構える事務所があって、そこが募集をしているからベトナムに行くことができるかもよ」と教えてもらい、応募してベトナムの建築デザイン事務所で働くことになりました。

建築家・大澤晃佑

――そこからベトナムでのキャリアがスタートしたのですね。

大澤:ベトナムに来て3年ほど建築設計事務所で働いていましたが、当初から独立するつもりで働いていました。メキシコでは働き始めて3年で自分の会社を設立したので、ベトナムではそれよりも早く独立しようと決意し、「いかに3年よりも早く独立できるか」ということを意識しながら働いていました。

ベトナムでの会社設立に必要な法律やレギュレーションを調べて、毎日お昼休みに一つずつ翻訳する日々。ハノイにあるハノイ市計画投資局に通いながら、必要な資料を集めては聞きにいき、「ここが間違っているよ」と教えてもらいながら進めていきました。そうしてできた「5plus One」という設計事務所は、いわば「お昼休みにできた会社」です(笑)。

――社会主義国であるベトナムで、外国人が会社を設立するのはとても大変だと聞いたことがあります。

大澤:ベトナムに住んでいる日本人にも「ベトナム人なしに日本人が会社を作るなんて無理」と言われました。「なんでみんな無理と言うのだろう?」と調べてみると、実は無理ではなくて、外国人でも会社を作れると言うことがわかって、何も問題なく設立できました。

――ベトナムでは具体的にどんなお仕事をされているのですか?

大澤:主にレストランや飲食店の設計を手掛けていますが、アパートや照明デザインも手掛けています。スイスで働いていた設計事務所が、自分たちでブロダクションをして作ったりもしていたので、その影響から家具や椅子も作ることができるのです。照明に関しては、僕がデザインして、施工はベトナムの業者にお願いする形で作っています。

また、「5plus One」で請け負う設計とは別に、調査開発、飲食店、宿泊施設の運営、ビジネスライセンスなど行う「場クリエーション」という会社も立ち上げました。今回撮影をしていただいている「Fu Hoo Cafe」や「105(One Zero Five)」というナチュラルワインを取り扱うワインバーも「場クリエーション」で手掛けています。

建築家・大澤晃佑が手がける「Fu Hoo Cafe」の照明

大澤晃佑が作った「Fu Hoo Cafe」の照明

この記事を書いた人

映画配給会社を経て、出版社で企画立ち上げ、海外取材などを数々こなし編集長に就任。現在はベトナム・ハノイを拠点に、日本、韓国を飛び回りフリーランスの編集者として活動中。趣味はアクセサリー製作。インスタではベトナム情報をメインに発信中。

Instagram:@_kaori.soma

Website:https://smartmag.jp/

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