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連載真説 星野仙一 ~誰も知らない“鉄拳制裁”の裏側~

「闘将・星野仙一」は怖くなかった…明大の先輩・高田繁が語る“演じる男”の計算と素顔

執筆者: ノンフィクションライター/長谷川 晶一

星野仙一にとって明治大学野球部の1年先輩だった高田繁が語る“闘将”の素顔とは。

王貞治の胸ぐらをつかもうとした日

 大学時代の星野を知る高田に、「アマチュア時代から、後の気性の荒さは垣間見えていたのですか?」と尋ねると、「星野は演じていたんです」と切り出した。

「現役引退後にNHKのキャスターになったとき、笑顔でさわやかに出演していましたよね。あれが素なんですよ。でも、グラウンドでは《星野仙一》を演じていた。プロの世界で成績を残すためには闘志をむき出しにしないと結果を出すことができなかったから。それで、あえて《男・星野》を演じているうちに、それが彼にとっての本性となっていった。僕はそんな気がしますね」

 本連載1回目の江本孟紀もまた同様の指摘をしていたことが思い出される。そして、高田は「いつのことだかハッキリとは覚えていないけど……」と前置きして、「演技」にまつわる、現役時代の星野の思い出を口にした。

「札幌の円山球場のデーゲームのことでした。その日、星野はいわゆる《上がり》で登板の予定はなく、裏でマッサージを受けていた。その試合で、ジャイアンツの関本(四十四)とドラゴンズの高木守道さんがホームベース上のクロスプレーをめぐって揉めたんです」

 一触即発の事態に、両軍ベンチから全ナインが飛び出してくる。そこにはマッサージ中の星野の姿もあった。

「アイツ、ユニフォームも着ていないのに乱闘に加わって飛び蹴りをしていたんですよ。それを見つけたから、“星野、お前はベンチに戻っとれ!”と一喝したら、“えへへ”と頭をかきながらベンチ裏に戻っていった。ニコッと笑ってたよ。興奮してやっているんじゃない。すべて計算していたんだ。それが星野の本当の姿だと、僕は思うけどね」

 星野がドラゴンズ監督を務めていた当時の選手たちによる「恐怖体験エピソード」は数多い。しかし、「星野」と呼び捨てにし、同時に「一喝した」経験を持つ者は少ない。大学時代の先輩、後輩の関係は生涯にわたって変わることはなかった。

「当然だよ、だってオレは先輩なんだから(笑)」

 後にドラゴンズ監督となった星野は、ジャイアンツと対戦した際の乱闘において、敵将である王貞治の胸ぐらをつかもうとしたことがある。87年6月11日、熊本・藤崎台球場での一件である。死球に怒ったクロマティが、ドラゴンズのマウンドにいた宮下昌己に殴りかかった。このとき星野は、王に詰め寄り、王の手を払いのけてその顔の前に自らの拳を突き出す威嚇行為を見せたのである。この一件を、高田もよく記憶していた。

「いくら星野であっても、普通は王さんには手を出しませんよ。でも、あのときは激高していたんでしょう。ただ、さすがに後で“しまった”と思ったはず。あのときだけだと思いますよ、星野にとっての《計算外》は。それ以外はずっと計算していたし、《星野仙一》を演じていましたから」

 球史に残る後輩の振る舞い、あえて言えば蛮行を、先輩はこのように総括した——。

後編に続く)

星野仙一にとって明治大学野球部の1年先輩だった高田繁が語る“闘将”の素顔とは。

Profile/高田繫(たかだ・しげる)
1945年7月24日生まれ。浪商高校、明治大学を経て、1967年ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目からレギュラーとなり新人王を獲得。川上哲治率いるジャイアンツV9の立役者の一人となる。「塀際の魔術師」の異名を持つ守備の名手でもあり、ベストナイン4回、ダイヤモンドグラブ賞(現・ゴールデングラブ賞)は6回受賞。現役引退後は日本ハムファイターズ、東京ヤクルトスワローズの監督も務める。また、2005~07年はファイターズGM、12~18年は横浜DeNAベイスターズGMも務めた。1学年先輩として、明治大学時代の星野と身近に接してきた。

Profile/星野仙一(ほしの・せんいち)
1947年1月22日生まれ。倉敷商業高校、明治大学を経て、1968年ドラフト1位で中日ドラゴンズに入団。気迫あふれるピッチングで、現役時代通算500試合に登板し、146勝121敗34セーブを記録。現役引退後はNHK解説者を経て、87~91年、96~2001年と二期にわたって古巣・ドラゴンズを率いる。02~03年は阪神タイガース、07~08年は日本代表、そして11~14年は東北楽天ゴールデンイーグルスに監督を務める。17年、野球殿堂入り。翌18年1月4日、70歳で天に召される。

インタビュー&文=長谷川晶一
撮影=大村聡志

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この記事を書いた人

1970年生まれ。早稲田大学卒業後に出版社へ入社し、女子高生雑誌『Cawaii!』などのファッション誌の編集に携わる。2003年からフリーに。ノンフィクションライターとして活動しながら、プロ野球12 球団すべてのファンクラブに入会する「12 球団ファンクラブ評論家®」としての顔も持つ。熱狂的な東京ヤクルトスワローズファンとしても知られ、神宮球場でのホームゲームには全試合駆けつける。単行本が7刷となり文庫化もされている『詰むや、詰まざるや 森・西武 vs 野村・ヤクルトの2年間』(単行本:インプレス、文庫:双葉社)をはじめ、ヤクルト関連の著書・連載多数。スポーツ総合雑誌『Sports Graphic Number』(文藝春秋)にも定期的に寄稿中。日本文藝家協会会員。

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