「うつは心が弱いことじゃない」アイドル“はるっぴ”から俳優・兒玉遥へ――うつ病を経て気づいた家族の愛と、自分を守る方法
執筆者: ライター・エディター/佐藤玲美
HKT48時代に「はるっぴ」の愛称でファンに親しまれ、卒業後は俳優として注目を集める兒玉遥。アイドル時代にうつ病を患い休業した経験を持つ彼女が、闘病生活から俳優として活躍する現在、そして思い描く未来を綴った著書『1割の不死蝶 うつ病を卒業した元アイドルの730日』(KADOKAWA)を刊行した。これまで語らなかった真実を綴った著書について、また、現在の心境を直撃した。
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15歳からHKT48の一期生として7年間所属し、20歳で双極性障害で休業。復帰後の2019年6月に卒業し、俳優としての活動を本格始動した兒玉遥さん。
――今回、自分の体験を本にまとめると決めた経緯は?
兒玉遥(以下、兒玉)「アイドル時代にうつ病で休業したときは、その理由を公表せず“体調不良”とお伝えしていたんです。療養期間を経て、女優に転身し軌道に乗り始めてからは、みんなに本当のことがお話しできていないことがずっと気にかかっていました。自分自身でもうつを克服できたという実感が湧いたことで、このタイミングならみなさんに公表してもいいかなという思いに至ったんです。もともとは、SNSのnoteで自分の病気のことを公表したのが始まりでした。それが出版社の方の目に留まって、お声がけをいただいたという感じです」
――noteに書き綴った時点でみなさんにお話ししたいという思いがあったということですね?
兒玉「実際に自分がうつ病になってみて、思っていた以上に治すのが難しいなと思ったし、ここまで回復するのにかなり苦労もありました。私自身、発症するまでは“自分のキャラクター的にうつ病になんてなるわけがない、私の人生とは無縁だ”と思っていたので、(私のように思っている)そういう人こそ、実はなりやすかったり、みんなが思っている以上に身近な病気なんだというメッセージを伝えたいと思っていました。自分自身としては、(今まで語ってこなかった)かっこ悪いところや弱いところをあえて出すことで、もっと生きやすくなるんじゃないかという思いもありました」
――noteで病気のことを公表したことで、闘病生活を送っていたことを知った方から何か反響はありましたか?
兒玉「“元気になってよかったね”という言葉をかけていただくことが多いですね。当時は握手会の券を買って会いにきてくださった方々に、当日になって、出れませんという発表をしたことなどもあったんですね。なので、“あの時の握手券、今も持っているんだけど、はるっぴが今こうして元気に活動していてくれてよかった”という言葉もあったりして。病気に対してではないですけど、ファンの方としては、あの当時のやるせない想いも残しつつ、それでも見守っていてくれる存在がいることが、今の自分の活動の励みになっています」
――著書には、アイドルデビューした15歳から現在までが描かれています。1冊の本にまとめていく作業では、辛かった当時のことを振り返る時間もあったと思います。ご自身がアイドル時代につけていた「反省ノート」を見返すこともあったと思いますが、どんな思いで制作をされていたのでしょうか?
兒玉「当時のことを振り返ることも多かったですが、やはり辛かった時期のことがフラッシュバックしてしまって、感情が溢れ出てしまう場面も度々ありましたね。それまでは、自分の防衛本能なのかわからないですが、辛かったことは思い出さないようにその感情に蓋をして見なかったようにしていた部分もあったので、過去を思い返す作業はかなりハードでした」
――途中でやめたいなんて気持ちにはなりませんでしたか?
兒玉「それはなかったです。やはり(書籍として)残すことに意味があるなと思いましたし、実際に現在、闘病中の方や、うつ病患者を支えている方々にも声が届けられればと思っていました。また、私が公表することで、誰にでも起こりうる病気だし、うつ病になるということは心が弱いということではないというのも、もっとたくさんの人に伝えたいという思いがありました」
この記事を書いた人
東京在住のライター・エディター。『smart』『sweet』『steady.』『InRed』など、ウィメンズ、メンズを問わず様々なファッション誌やファッション関連のwebでライター&編集者として活動中。写真集やスタイルブック、料理本、恋愛心理、インテリア関連、メンタル&ヘルスケアなどの本の編集にも携わる。独身。ネコ好き。得意ジャンルはファッション、ビューティー、インテリア、サブカル、音楽、ペット、料理、お酒、カフェ、旅、暮らし、雑貨など。
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