カンヌを震わせた“日本の新世代”…黒崎煌代×木竜麻生が語る『見はらし世代』という映画体験
執筆者: ライター/黒川すい
今までの芝居の魅せ方をそぎ落とした先にある“何もしない美学”
──ここからは役作りについて伺っていきたいと思います。改めて、ご自身の言葉で役柄について述べるなら、どのような印象でしょうか?
木竜 恵美は、日常の些細なこと、例えば何を食べるだとか、どこへ行くだとかを、自分でしっかり考えて選択している人だなと感じています。自分の思いをきちんと言語化して、相手に伝えることができる印象です。作中では、蓮よりも硬さのあるセリフを話す部分も多かったので、ちゃんと恵美の言葉として発せられるよう意識しました。
──共感できたところや、ご自身に似ているなと感じる部分もありましたか?
木竜 恵美と彼女の婚約者・安藤の関係性について、団塚さんと話したときに「恵美が言語化できない支離滅裂な状態のときでも話せるのが安藤」と(団塚さんが)おっしゃっていて。私も普段はきちんと言葉にしようとするんですけど、親密な相手に対してはちょっとまとまりきらない状態でも出しちゃうところがあるかもなって思いました。安藤とのシーンのあの感覚は、自分に近いものを感じます。
──黒崎さんは、蓮に対してどういう印象を持たれましたか?
黒崎 僕が演じる蓮は、普通の何でもない人。ちょっと作中では、ひと事件ありましたけど……(笑)。
木竜 ひと事件(笑)。たしかにあったけど、言葉のチョイスが煌代らしいね(笑)。
黒崎 とにかくひと事件はあったけど、普通の人なんです。僕、普段は芝居でいろいろやってしまうんですけど、今回はそれをそぎ落として“何もしない美学”を徹底してみました。あと蓮という役は、監督の投影だと思っていて。だから団塚さんといっぱいご飯に行って、監督を観察しました。オファーをいただいた時点で、僕も団塚さんに通ずる部分があるんだろうなと解釈していたので、あまりキャラクターを作り込むことはしなかったです。サボっていたというわけではなく、“何もしない”という役作りです!
──何もしないということをする……哲学っぽいですね。監督と価値観が似ているなと感じる部分は多かったですか?
黒崎 めちゃくちゃ多いですね。演出に関する話の中でも、具体的な話はお互い一切したくないんです。ニュアンスで通じ合えるところが大きかったと感じます。でも木竜さんはそれでちょっと困ってましたよね(笑)。
木竜 2人がニュアンスで会話している横で「それでいけるの!?」とすごく思ってました(笑)。でもたぶんこれは、役柄や俳優としての作り方の違いなんだろうなって。だから団塚さんは、私への話し方と煌代への話し方をちゃんと変えてくれていた印象です。
この記事を書いた人
アパレル業界に勤めた後、フリーライターに。ファッションはもちろん、グルメ、エンタメ、お出かけ情報など幅広いジャンルの執筆経験あり。ウェブを中心に活動中。趣味はアートトイの収集や喫茶店巡り、読書。
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