「セフレが下、恋人が上というわけではない」「セフレという略語の雑さや軽さが…」今泉力哉&山中瑶子が切り込む現代の恋愛観
執筆者: ライター/石野志帆
Prime Videoで9月3日(水)より独占配信されている恋愛考察バラエティ『セフレと恋人の境界線』。短編映画とスタジオトークを組み合わせ、“セフレ”と“恋人”という曖昧な関係に切り込んでいます。短編映画を手がけたのは、恋愛の機微を繊細に描き続けてきた今泉力哉監督と、長編デビュー作『ナミビアの砂漠』でカンヌ国際映画祭の国際映画批評家連盟賞を受賞した新鋭・山中瑶子監督。作風も世代も異なる2人の監督が、このテーマにどう向き合ったのか。本作でお互いに感じた魅力や、現代人の恋愛観、そしてテーマとなる“境界線”に対する本音までたっぷりと語ってもらいました。
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「同じスタッフでも全然違う映像に」互いの魅力を語る
──今回、今泉さんと山中さんがこのような形で協業されるのは初めてですが、お互いの作品について、これまでどのような印象を持っていましたか?
今泉力哉(以下、今泉) お話をいただいたときは山中監督の長編映画『ナミビアの砂漠』公開前だったので、『あみこ』や『魚座どうし』などの短編を拝見していました。共通して感じたのは、私が苦手としている、人物の動かし方が非常に巧みだということです。登場人物たちが、決して一つの感情だけで動いているわけではなく、山中監督がその人のことを全て理解して描いているわけでもない、という感じも含めて、本当に「生き生きした人」がいる作品を作っているという印象でしたね。
PrimeVideoで独占配信中の『セフレと恋人の境界線』で脚本と監督を担当した今泉力哉氏
山中瑶子(以下、山中) 監督自身が「世界をどう見ているか」みたいなものが絶対に反映されると思うので、今泉さんと私の映画とではやはり全く違うところがあるなと思います。私の映画のキャラクターを見ていると“悪意”を感じることもあるのですが、今泉さんの映画にはそうした人物がほとんど登場しませんよね。にもかかわらず、観ているとそわそわしたり、居心地の悪さを感じるシチュエーションがあったりします。おそらく長回しの効果もあるのでしょうが、たまらない気持ちになるんです。でもそれは“人の嫌さ”からくるものではない、という点が非常に興味深いですし、面白いと思っていました。
PrimeVideoで独占配信中の『セフレと恋人の境界線』の第1作『恋人になれたら』を監督した山中瑶子氏
今泉 確かに、意図してやっていることではないかもしれませんが、“気まずさ”のようなものは意識しているかもしれません。単純に分かりやすくいい人や悪い人を出したくない、という思いもありますしね。
──今回の企画で、新たに感じたお互いの魅力について教えてください。
今泉 山中さんが撮影されたものを観て、“人物を動かす”描写はもちろん、自分では絶対に撮れない場面がやはりたくさんあるなと思いました。「落ち込んだり悩んだりしている女性がスマホをいじりながらバランスボールの上で跳ねている」というシーンがあったのですが、「悩んでいる人が動いている」というのは、面白かったですね。同じスタッフでやっているのに、撮れているものがすごすぎて、仕上げのときに“嫌な気持ち”になりながら見ていました(笑)。
山中 あのバランスボールのシーンは、確か脚本では「ソファーに座ってスマホを見ている」というような“ト書き”だったと思います。ただ私自身、落ち込んでいるときに動きが止まっていると、さらに落ち込んでいくタイプなんですよ。そういう自分の身体感覚が出ているのかもしれませんね。嫌なことがあったら歩き回るほうが落ち着く。逆に今泉さんは、落ち込むときにじっとしていられるんですか?
今泉 私はもう全然動きませんね(笑)。だから、それはまさに生理的な違いだと思います。それで言うと私の場合は、長回しに対する恐れがあまりないんです。たぶん、「ただ淡々としていることが退屈になるかも」といった感覚がないからだと思います。
山中 この作品では、そうした今泉さんの“間”や長回しを恐れないという手法が、スタジオトークと一緒になることで、トークを盛り上げる“間”になっていましたよね。
今泉 「ここでスタジオの声が上がるだろう」とまでは考えて制作していないので、ほかのドラマや映画と撮り方を変えてはいなかったのですが、結果的にそれをスタジオが拾ってくれていましたね(笑)。
この記事を書いた人
TV局ディレクターや心理カウンセラーを経て、心を動かす発見を伝えるライター。趣味はリアリティーショー鑑賞や食べ歩き。海外在住経験から、はじめて食べる異国料理を口にすることが喜び。ソロ活好きが高じて、居合わせた人たちの雑談から社会のトレンドをキャッチしている。
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