AV女優、作家、犬の飼い主。「紗倉まな」 という生き方が詰まったエッセイ集『犬と厄年』を語る「友達は3人」「犬の名前は秘密」…“赤裸々トーク”が刺さる
執筆者: 音楽家・記者/小池直也
AIを表現に持ち込みたくない
――紗倉さんが言うところの「えろ屋」のお仕事と執筆はどのように紗倉さんのなかで両立されているのでしょう?
紗倉:AVの現場で感じたことを小説に落とし込むことも、その逆もあるんです。そういう互換性はあるのですが、端から見ると全然違うものですよね。
ファンの方もえろ屋の私を好きな人と、執筆やラジオとかで話したり表現している私を好きな人がいます。同じ「紗倉まな」でも見せ方が全然違うから、戸惑う人もいるのかもしれません。
――小説のAmazonレビューで「この文章がゴーストライターでないなら、もう紗倉さんのAVを見ても興奮しない」という投稿もありました。
紗倉:撮影現場で会った男優さんも「ニコニコしてて、セックスも好きなんだろうな」と思っていたみたいなんですけど、本を読んだら「こういう眼差しで世界を見てたの?」と驚いたみたいです。
恐らく反対の反応もあると思うんですよ。だから入口によって印象が違うんだろうと思います。コメンテーターの私を知った人には「アナウンサーだと思っていました」と言われました(笑)。
――物語をどのデバイスで書くか、本をどのメディアでインプットするか、と同じように紗倉さんをどの仕事で知るかによってイメージが変わると考えると興味深い話です。
紗倉:入口によって見方が変わるし、きっといろいろな私がみなさんのなかにいるんだろうなと。それを聞くのが楽しかったりもしますね。「AVに出ながら作家気取り」とディスられることもありますけど、私としてはできることを全力でやっています。
――ChatGPTなどの生成AIの台頭で物書きの未来について議論になっていますが、それについて思うことは?
紗倉:私は使っていないのですが、話を聞いていると便利そうですよね。先日も九段理江さんが、ChatGPTのような生成AIを一部使って描いたという小説『東京都同情塔』で芥川賞を獲って話題になっていました。
ただ私は現状だと表現には持ち込みたくないなと思ってます。自分の血肉が入っていない感じがすると言いますか、心血を注ぎたいので誰かに頼りたくないんです。「AIのサポートがあることでよりよい作品になる」という考え方もあると思うのですが、私は今はそこまでは使いたいとは思いません。
――もう既に書いたのがAIの文章なのか人間の文章なのか、わからない領域になりつつあります。
紗倉:古い考え方なのかもしれませんけど、AIに頼り切ったら「これは自分の作品です」と言い切れなくなってしまいそうな気もして。もっと精度が上がったさらなる先の未来、行き詰ったときだけにサポートしてもらえたらいいな、程度には思います。
Profile/紗倉まな
1993年、千葉県生まれ。作家・A V女優。著書に小説『最低。』(瀬々敬久監督により映画化)、『凹凸』『春、死なん』(野間文芸新人賞候補)、 『ごっこ』『うつせみ』など。最新刊はエッセイ集『犬と厄年』。
Instagram:@sakuramanateee
X:@sakuramanaTeee
■書籍情報
紗倉まな『犬と厄年』
発売中
https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000413623
撮影=西村 満
インタビュー&文=小池直也
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この記事を書いた人
音楽家/記者。1987年生まれのゆとり第1世代、山梨出身。明治大学文学部卒で日本近代文学を専攻していた。自らもサックスプレイヤーであることから、音楽を中心としたカルチャー全般の取材に携わる。最も得意とするのはジャズやヒップホップ、R&Bなどのブラックミュージック。00年代のファッション雑誌を愛読していたこともあり、そこに掲載されうる内容の取材はほぼ対応可能です。
Website:https://smartmag.jp/
お問い合わせ:smartofficial@takarajimasha.co.jp
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