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AV女優、作家、犬の飼い主。「紗倉まな」 という生き方が詰まったエッセイ集『犬と厄年』を語る「友達は3人」「犬の名前は秘密」…“赤裸々トーク”が刺さる

執筆者: 音楽家・記者/小池直也

6年ぶりのエッセイ集『犬と厄年』を発表した紗倉まな

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紗倉まなが6年ぶりのエッセイ集『犬と厄年』を刊行した。AV女優や作家など多彩な顔を持つ彼女が、iPhoneを片手にnoteで綴ったテキストを中心に集めた一冊だ。タイトルの通り、愛犬との生活や厄年を迎えて感じた身体の変化が中心に描かれているが、そこには「友達」という裏テーマも潜む。今回のインタビューでは、本作の執筆を振り返ってもらった。

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友達は3人だけ

6年ぶりのエッセイ集『犬と厄年』を発表した紗倉まな

――エッセイにおいては6年ぶりとのことで、発売された今の心境はいかがですか?

紗倉まな(以下、紗倉):個人的には書籍化することを想定していなかったので、最初はnoteに徒然(つれづれ)なるままに書いていました。『群像』で掲載された作品も含まれているので、改めて一冊となって読み返すと、自分の日常の変遷も感じたり。

――noteに投稿された経緯は?

紗倉:最近は小説が続いていたこともあってエッセイを書いておらず、環境の変化やイッヌ様との他愛もない日常を書き残したいと思っていたんです。それから私の文章は5000~9000文字くらいの長文なので、文字数制限のないnoteに合っているなと。

2023年の11月から始めて、電車に乗りながらでもiPhoneで自由気ままに書けるのは楽しかったですね。その後、ある程度の投稿数になってからXで「本にできないかな〜」と呟いてみたら、お世話になっている講談社さんが即座に声をかけてくださり今回の書籍化に至りました。

――エッセイと小説は書き手として違うものですか?

紗倉:全然違いますね。創作(小説)のときは自分の思っていることや思ってもいないことまでをも登場人物に言わせることができますが、エッセイは気楽に書ける代わりに自分の発言になるので責任感を感じることもあります。あとは「紗倉さんの小説はHPが削られるけど、エッセイは柔らかくて好き」という感想もありました(笑)。

――タイトルのネーミングについても教えてください。

紗倉:改めて読み返してみた後、担当編集者さんからのご提案で、「厄年」と「犬」という、悪いことと良かったことの対比にしたタイトルにしました。

――犬の名前は“個犬情報”の観点から公開されていませんね。

紗倉:意外と犬の情報って簡単に漏れてしまうんですよね。動物病院に連れて行くと写真と名前が出たり、しつけ教室のSNSでも名前付きで投稿されたり。うちのイッヌ様は変わった名前なので、特定されないように気を付けています。

――最近は野良犬を見ること自体が少なくなりましたが、茨城の山奥で兄弟犬6匹とともに保護されたと。

紗倉:千葉で昔、車で夜道を走っていたら野犬に囲まれたこともありましたけど(笑)、今はすぐ保護されるみたいですね。赤ちゃんで保護されることも珍しいみたいでした。イッヌ様も赤ちゃんの状態で出会ったので、野犬感はまるでなかったです。

――保護する際の審査の流れも明かされていました。

紗倉:保護犬団体の譲渡会で出会ったとき、職業欄には正直に「AV女優」と書きましたが、それだけだと印象的にどうかなと思って横に「ライター」も一応添えました。嘘はついていません(笑)。辛い過去を背負ったワンちゃんたちもいるので、条件や審査が厳しいんです。

年収や家の間取りや写真なども正直に書いたり送ったりしましたけど、集まっていた希望者のみなさんの多くは模範的家族な感じだったので、正直「これは落ちるな」と。だから応募した多くの組のなかで選ばれたときは本当に驚きました。これも巡り合わせなのかなと感じました。

6年ぶりのエッセイ集『犬と厄年』を発表した紗倉まな

――ちなみに「犬」と「厄年」以外に第3のトピックとして「友達」があるのではないでしょうか。本文中で「イッヌ様」という言葉が75回使われるのに対し、「友達」は48回出てきます。

紗倉:そんなにですか!? 自分では気づいていませんでした。「犬と厄と友達」というタイトルでも「部屋とYシャツと私」みたいな響きでいいですね(笑)。

――「満員電車のトラウマ」の章で「友達が3人いる」と書かれていたのですが、裏を返せば「3人しかいない」のですか?

紗倉:仲のいい同業者の方や知り合いは多いんですけど、その人たちが友達かと聞かれたら「友達と言ってしまっていいのか?」という感じで。だから学生時代の友達ふたりと、大人になってから「友達になりたい」と伝えた向坂くじらさんの計3人が、私が唯一友達と言える人たちですね。

そうは言いつつも、もう「友達」という枠組みは必要ないかもしれないなと思うんです。学生時代は自分たちの関係を表現するのに使っていましたが、大人になってからは関係性を示す明確な言葉って別に不要というか、そうした言葉に縋(すが)るのがどこか野暮に感じます。友達が多いか少ないかでマウントしたりするのも何か違うなと感じますし。

――確かにSNSで相互フォローしていたり、顔見知り程度で「友達」とカウントするのは違和感があります。

紗倉:自分だけが友達だと思っていて、相手がそう思ってないこともありますしね。「互いに思い合っている」という基準でカウントしたら、友達ってそんなに多くないような気がします。

友達が多い人の連絡量とかを聞くと目眩(めまい)がしますし、そもそも大人数の友達がそんなにいたとすれば私は連絡をする時点で疲弊してしまうかもしれないです(笑)。

個人的には「友達」という言葉を再定義しているところなのかもしれません。

この記事を書いた人

音楽家/記者。1987年生まれのゆとり第1世代、山梨出身。明治大学文学部卒で日本近代文学を専攻していた。自らもサックスプレイヤーであることから、音楽を中心としたカルチャー全般の取材に携わる。最も得意とするのはジャズやヒップホップ、R&Bなどのブラックミュージック。00年代のファッション雑誌を愛読していたこともあり、そこに掲載されうる内容の取材はほぼ対応可能です。

X:@naoyakoike

Website:https://smartmag.jp/

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18:00

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