ウエストランド井口「いい加減、僕を信じろよ!」お笑い界の未来を語る“ひねくれ大正論”が痛快すぎる
執筆者: 音楽家・記者/小池直也
「すごそう」「新しそう」というだけで崇める風潮は…
――今となっては知りようのない話ですからね。
井口:録画されてないものはネットで見れない。だとしたら本人が語るしかないじゃないですか。おじいさんおばあさんに聞く戦時中の話とかみたいに、テレビ初期やお笑いの歴史を語り継ぐことは大事。
――この本もリアルタイムの空気感を閉じ込めているという点で同等の価値があるのでは?
井口:いやいや、相当しょうもないですよ(笑)。でも確かに本来は残されないような、しょうもないことが記録されていることが実は貴重かも。どのYouTubeを見たって、こんなものはないです。
僕のおじいちゃんが自分史みたいなのを書いていたんですよ。そこには戦争中のこととか、田舎にいた若者のリアルな日常が書いてあって。偉人の戦争話はよくあるけど、そういう当時の記録は少ないじゃないですか。それを読んで、すべてのおじいさん、おばあさんに「自分史を書いてほしい」と感じました。
――連載の3年を経て、ご自分やお笑い界の変化を感じていますか。
井口:僕自身は変わってませんけど、令和ロマンが2023年からM-1を2連覇してから、(髙比良)くるまを全員が信じるようになってしまいましたね。何も考えず、どんどん人々の脳みそが死んでいる!もう日本は終わり。「すごそう」とか「新しそう」というだけで崇(あが)めるようになって、本当に終わりだと思います(笑)。
――お笑いに限らず、他のジャンルでもそれは感じますか?
井口:YouTubeとかを見てると、いろいろなジャンルで矢継ぎ早にそれっぽいことを言う人が人気ですよね。この本を読めばわかると思うんですが、いつも僕は正しいことを言っているのに誰も信じない。それが本当にもう最悪で、今が日本史で最悪の時代。本当に考えないとヤバいですよ!
――この流れは止まらないんじゃないですか?
井口:いつか絶対にひっくり返るとは思います。若い奴らはやりたいことしかやらずにワガママなだけで、「情」とか「義理」とか「人情」がない。そういうダメな大人ばかりになると社会は立ち行かなくなる。もっと組体操をやったり、太陽を浴びたりしていかないといけませんよ!
僕は老害と言われても結構ですが、彼らが若いから嫌なんじゃなくて、単純に嫌な奴なんだなと。仮にあいつらが年上でも嫌だと思う。そういう人に騙(だま)されず、そろそろ僕だけが正しいと気づいてほしい…。
――本の帯にも「もっと僕を信じろよ!」と書いてありましたね。
井口:「なぜ帯が自分なんだ?」と(笑)。会議していろいろな方の名前が挙がっていたのに。本ができたら自分だったという。そもそも著者ですから、買ってくれと勧めるのは当たり前ですよ。
この記事を書いた人
音楽家/記者。1987年生まれのゆとり第1世代、山梨出身。明治大学文学部卒で日本近代文学を専攻していた。自らもサックスプレイヤーであることから、音楽を中心としたカルチャー全般の取材に携わる。最も得意とするのはジャズやヒップホップ、R&Bなどのブラックミュージック。00年代のファッション雑誌を愛読していたこともあり、そこに掲載されうる内容の取材はほぼ対応可能です。
Website:https://smartmag.jp/
お問い合わせ:smartofficial@takarajimasha.co.jp
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